2月28日以降の対イラン攻撃では、軍や情報機関の幹部が相次いで標的となった。複数の要人がほぼ同時に排除されたとされる今回の作戦は、極めて高い精度を示している。こうした「個人を狙う攻撃」は突発的なものではなく、過去から連続する作戦の延長線上にある。

その象徴が2020年11月に実行された、核開発の中核人物とされたモフセン・ファフリザデの暗殺である。

事件の翌年、米紙ニューヨークタイムズが報じたところによると、暗殺には人工知能(AI)を備えた高性能なロボット兵器が使われた。この兵器はベルギー製のFN MAG(7.62mm機関銃)系統と見られる銃器と複数の高精度カメラ、センサーを組み合わせ、衛星通信による誤差を補正するためにAIが用いられた。これを積んだ車両を無人の状態で路上駐車し、走行中の車に銃撃して命中させた後、車外に逃れた博士の姿も認識して発砲し、暗殺に成功した。

同事件は、こうした技術的な側面で大きな注目を集めたが、実際に作戦の成否を分けたのは事前の情報収集にあった。

標的の移動ルート、護衛体制、日常の行動パターン。これらは一朝一夕で把握できるものではない。長期間にわたる監視と、内部からの情報提供が不可欠である。さらに、現地での機材設置や撤収にも協力者が関与した可能性が高い。

(参考記事:「内通者500人逮捕」が映す、イラン防諜活動の脆弱性

今回の攻撃でも、同様の構図が浮かび上がる。指導部の位置情報がリアルタイムに近い形で把握され、複数の標的が同時に攻撃されたとすれば、それは単一の情報源ではなく、複数のネットワークが連動して機能した結果と考えるのが自然だ。

イスラム革命防衛隊は強固な組織であり、外部からの直接的な侵入は困難とされる。しかし、組織が人によって構成されている以上、完全な密閉状態は存在しない。異動、昇進、出張といった日常の動きが、情報の流れを生む。

また、内部には派閥対立や利権争いも存在するとされる。こうした要素は、時に情報漏洩の契機となり得る。外部勢力は、その「隙間」を見逃さない。

暗殺という行為は衝撃的だが、その本質は物理的な破壊ではなく、情報戦の帰結である。標的の位置が分からなければ、どれほど精密な兵器も意味を持たない。今回の斬首作戦は、人的情報の蓄積がいかに戦局を左右するかを改めて示したと言える。