世界のエネルギー市場が中東情勢の緊迫化で揺れ、原油価格が急騰する中、北朝鮮の最高指導者は“石炭頼み”の路線を改めて打ち出した。
朝鮮中央通信によると、北朝鮮の金正恩総書記は15日、平安南道・順川地区の天聖青年炭鉱を訪れ、最高人民会議代議員選挙に参加。投票後、炭鉱労働者らを前に演説し、「石炭は昨日も今日もわが国の工業の食糧であり、自立経済発展の原動力だ」と強調した。演説は、世界的なエネルギー危機をよそに“石炭中心主義”を掲げる内容だった。金氏は、国家経済を支える中枢産業の燃料は石炭だと指摘し、炭鉱労働者を「国家建設の先兵」「最も誉れ高い勲功を立てている国の中核」と持ち上げた。
北朝鮮は石油のほとんどを輸入に依存する一方、石炭資源は国内に豊富に埋蔵されている。国際制裁や外貨不足で石油の確保が難しい事情もあり、同国は古くから石炭火力や石炭化学を柱とする“石炭経済”を掲げてきた。
金氏は演説で、石炭生産を現在より1.2倍に増やすことを新たな5カ年計画の目標として提示。「国家が生きていくには石炭農業を着実に営むべきだ」と語り、石炭産業への国家投資を拡大する方針も示した。
また、炭鉱地区の住宅建設や生活環境の改善にも言及。「国の威容と現実の要求とはあまりにもかけ離れた炭鉱村の姿を払拭する」と述べ、炭鉱の近代化や労働者の生活向上を進める考えを表明した。
今回の訪問は、最高人民会議第15期代議員選挙に合わせたもの。金氏は炭鉱企業所の支配人を候補とする選挙区で投票し、「真の人民の代表として責任を果たすように」と激励した。
中東の戦火で世界が“石油ショック”の不安に揺れる中、北朝鮮は逆に石炭増産を国家戦略の柱に据える構えだ。
ただ、老朽化した設備や電力不足などで炭鉱の生産効率は低いとされる。国際社会が脱炭素へと向かうなか、北朝鮮だけが「黒い燃料」に未来を託す構図は、同国の孤立したエネルギー事情を浮き彫りにしている。
