米国のドナルド・トランプ政権は1月、南米のベネズエラに対する強硬措置を実行したのに続き、2月末には中東のイランに対して大規模攻撃に踏み切った。さらにキューバに対しても政治的圧力を強めており、いわゆる「反米国家」を取り巻く安全保障環境は急速に厳しさを増している。
こうした国際情勢の中で、金正恩総書記が進めているのが、娘の金主愛への権力継承、いわゆる「四代目後継」構想だ。軍事行事や重要施設視察への同行、国営メディアでの頻繁な登場などを見る限り、後継準備はすでに象徴的段階を超え、実質的な政治プロジェクトとして動き始めているとみられる。(参考記事:【写真】金正恩父娘“恋人のような密着シーン”に北朝鮮内部から「おぞましい」との違和感も)しかし、その前途は決して平坦ではない。
トランプ政権の対外行動を振り返ると、ベネズエラでもイランでも、攻撃の正当化理由の一つとして「反体制運動」や「国民の自由」を掲げている。トランプ氏が相手国民の人権や民主主義をどこまで真剣に考えているのかは議論の余地があるとしても、少なくともそれが国際政治の中で行動の大義名分として使われているのは事実だ。
この論理が今後、北朝鮮に適用されない保証はない。
だからこそ金正恩氏にとって、自身と体制の安全を確保するうえで最も重要なのは、国内の反体制の芽を徹底的に封じ込めることになる。しかし皮肉なことに、娘への世襲を進める過程そのものが、体制の正統性に新たな疑問を生む可能性がある。
北朝鮮社会はすでにかつてとは違う。密輸された韓国ドラマや外国映画、USBメモリー、携帯通信などを通じて外部情報は広がり続けている。体制がどれほど思想統制を強めても、外の世界の存在を完全に消し去ることはできない。多くの住民が、世界には別の生き方や政治体制があることを知っている。
その中で、豪華な式典や軍事パレードの場で父娘が並び立つ姿を見せつけられることは、必ずしも体制の威厳を高める効果ばかりではない。
実際、北朝鮮内部では金正恩父娘の振る舞いに対し、「おぞましい」「王朝国家のようだ」といった反感の声が漏れているとの情報もある。極端な貧富の格差に苦しむ住民にとって、権力者の家族が国家の未来を当然のように独占する光景は、体制の神話をむしろ損なう可能性すらある。
