若者たちは、ついに自らの身体を傷つけるまでに及んだ。
北朝鮮は昨年11月、自国の兵士をロシアに派兵した。その規模は1万人とも1万2000人とも言われている。彼らは、最前線であるクルスク州に送られたが、韓国の情報機関・国家情報院によると戦死者は300人、負傷者は2700人に達した。
派兵について、北朝鮮の国営メディアは一切報じていないが、中国から流入した情報や戦死した兵士の遺族の話が恐ろしいスピードで全国に広がった。当局は、流言飛語(デマ)だとして徹底的に取り締まる方針を示したが、情報の広がりを止めるのは困難だろう。
(参考記事:「捕虜になった北朝鮮兵」家族はこうして殺される)北朝鮮では4月から招募(新兵の入隊)が始まるが、対象の若者たちは、なんとかして兵役から逃れようと必死になっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、軍当局は最近、軍への入隊条件を変更した。それは、「両手の指すべてが欠損していない限り、入隊しなければならない」というものだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面以前は、右手の人差し指が欠損していれば、入隊を免除された。銃の引き金を引けないからだ。これに目をつけた若者は、入隊を免れるべく、右手の人差し指を自ら切断した。また、既に入隊した者の中からも、指を切断する者が現れた。形の上では「不意の事故」ということにするが、実際は自傷行為だ。
そこで当局は、両手の人差し指が欠損していれば入隊を免除すると、規定を変更した。すると今度は、両手の人差し指を切断する者が現れた。
「入隊すればロシアに送られる」との噂が広がり、「死ぬよりはマシ」だと、自傷行為に及んだのだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面そこで軍当局は、指が1本でも残っていれば入隊しなければならないと、規定を変えたのだ。
朝鮮人民軍(北朝鮮軍)では飢えや虐待が蔓延しており、ただでさえ、兵役を忌避する風潮が強まっていた。そのうえ戦場に送られかねないとなれば、逃れようとするのは人情だろう。
(参考記事:女性少尉を性上納でボロボロに…金正恩「赤い貴族」のやりたい放題)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面両江道(リャンガンド)の情報筋は、入隊対象者のもとに入隊申請通知書が届き始め、本人も親たちも恐怖に震え、なんとかして兵役を逃れようとする空気が広がっていると伝えた。
「わが国(北朝鮮)の軍人がロシアの戦場で無惨に死んでいるとの情報に接し、ほとんどが入隊を拒否(しようと)しているのが実情だ」(情報筋)
そこで、指の切断を行ったり、考えたりする若者や親がいたが、指が1本でも残っていれば入隊せよとの命令に、彼らは落胆している。
(参考記事:「兵士がカネのために死んでいる」北朝鮮国民、ロシア派兵で国家に怒り)一方、一般国民の間では、他国の戦争に駆り出されるということに憤激している人も少なくないという。北朝鮮の人々は一般的に、「米軍や韓国軍から国と人民を守っている」として朝鮮人民軍(北朝鮮軍)を誇りに思っているが、そんな認識が音を立てて崩れてしまったということだ。
金正恩総書記は、経済政策、食糧政策の失政を挽回するために、若者を送り出し、その見返りとして食糧などを受け取っているもようだが、何よりも大切な世論の支持を完全に失ったのかもしれない。