北朝鮮の金正恩総書記は今から10年前の2013年12月12日、叔父である張成沢(チャン・ソンテク)朝鮮労働党行政部長を処刑した。
金正恩氏はこれより2年前に父・金正日総書記が死亡したことで権力を継承し、政権の座に就いた。このときまだ20代だった金正恩氏に対しては当初、権力掌握を不安視する向きがあった一方で、海外で教育を受けたこともあり開放的な政策をとるかもしれないとの楽観論もあった。
そのような期待は、北朝鮮が2013年2月に3回目の核実験を強行するなどしたことで吹き飛んでいたが、その出来事にも増して、金正恩氏が「ただ者ではない」と印象付けたのが張成沢氏の処刑だった。
実際のところ、北朝鮮の「ナンバー2」とされた張成沢氏の排除に向けた動きは同年11月から顕在化していた。韓国の国家情報院は2013年12月3日、国会情報委員会に対し「張氏最側近に対する公開処刑が先月下旬に行われた事実が先ごろ確認された」と報告した。処刑された2人は李龍河(リ・リョンハ)党行政部第1部長と張秀吉(チャン・スギル)同副部長だった。
韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使や韓国の情報機関関係者らの証言によると、2人は杭に縛り付けられ、大口径の4銃身高射銃で処刑された。これで撃たれると、人体は原形をとどめず文字通り「ミンチ」となる。さらに、バラバラになった2人の遺体は火炎放射器で焼かれ、その場で灰になったという。2015年には、玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力部長も同じ方法で処刑されている。
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2人の処刑を見せられた幹部たちはしばらく、食べ物も喉を通らなかったと言われる。
一方、「国家転覆陰謀行為」により死刑判決を受けた張氏の処刑は、非公開で行われたとされる。金正恩氏がこうして張氏を排除したのは、彼の「増長」を嫌ってのことだと言われる。その一連の行動は、権力掌握のため暴力と恐怖を駆使する動物的本能が、金正恩氏に備わっていることを印象付けた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮を巡っては今年、金正恩氏の娘の登場が頻度を増したことが印象的だったが、彼女が後継者になるかどうか、筆者はまだまだ判断する気になれない。北朝鮮の独裁体制を支えるのは恐怖政治だ。それをうまく出来るかどうかについては、まだ幼い娘はもちろん、金正恩氏の妹である金与正(キム・ヨジョン)氏も行動で証明できてはいない。
北朝鮮の体制は、金正恩氏のキャラクター抜きには語れぬものなのだ。