6月初旬、北朝鮮の国境警備隊第25旅団で指揮官緊急会議が開かれたことは、本欄で既報のとおりだ。
会議では「国境警備隊の軍人たちが軍人としての使命と義務を果たし国境沿線(沿い)を鉄のように固く守るよう指揮官たちの役割を高めるべき」とする上層部からの指示が伝達された。さらに、「密輸や脱北行為を幇助し金儲けをして摘発されれば、銃殺に近い処罰を受けるだろう」とも伝えられた。
しかし米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、こうした警告にも関わらず、同旅団では逸脱行為が発生しているとのことだ。
北朝鮮が世界でも稀に見る閉鎖的国家であるのは周知のとおりだ。そして、それを形作っているのが国境封鎖を担う警備隊なのだが、それだけに、彼らの逸脱には厳罰が下されることも少なくない。
2021年3月20日には、まさにこの旅団所属の11人もの隊員と軍官(将校)が一度に公開銃殺される衝撃的な事件が起きた。
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経緯は詳らかにされていないものの、当時行われていた検閲(監査)の結果に基づくもので、国境を守るべき国境警備隊員が密輸に加担する現象が根絶されないことに対して、当局は「もはや我慢できないという心情で、芽を摘むことにしたのだろう」(情報筋)ということだ。
北朝鮮は2020年1月から新型コロナウイルス対策で国境を封鎖しており、密輸は防疫ルール違反となる。金正恩総書記は防疫ルールの違反者に、軍法を適用するよう命じている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面銃殺後、「やつらは反逆者だ」「やつらの末路を目に焼き付け、覚えておくべきだ」などと言った政治宣伝が続けざまに行われ、国境警備隊のみならず、密輸で生計を立ててきた多くの地域住民の間にも恐怖が広がったという。
RFAによると、最近起きた逸脱行為というのは、隊員が上官の机から何らかの書類を盗んで逃走したというものだ。書類はさほど重要なものではなかったとのことだが、冒頭で述べた会議の件もあってか、部隊では上を下への大騒ぎになったという。
この隊員が書類を盗んだ理由については言及されていないが、おそらく脱北するつもりだったと思われる。内部資料を韓国の情報機関などに売れば、物によっては、それなりのカネになり得ることを隊員たちは知っているのだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面部隊が大騒ぎになったのも、その可能性を感じてのことだろう。ちなみにこの隊員はまだ、捕まっていないもようだ。