コロナ対策の一環としての警備増強のため、一昨年8月から国境沿いの地域に派遣されていた「暴風軍団」こと朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第11軍団の一部が撤退していたことがわかった。その理由は「ミイラ取りがミイラになった」からだ。
デイリーNK内部情報筋によると、朝鮮人民軍総参謀部は、国境封鎖作戦遂行のために慈江道(チャガンド)の中国との国境沿いに派遣されていた暴風軍団の1個大隊に撤収を命じた。この大隊は、道内の渭原(ウィウォン)郡に展開し、国境警備に当たっていた。
その理由だがまず、派遣されてから3年近く経つのに、任務遂行がうまく行っていないことによる、戦略戦術的な理由もあるとのことだ。もうひとつは、国境沿いで建設されていたコンクリート壁(コンクリートの柱に3300ボルトの電流が流れる高圧電線を張ったもの)が完成したことだ。暴風軍団はもともと、コンクリート壁が完成すれば撤収することになっていた。
さて、3つ目の理由だが、次のようなものだ。
「総参謀部が思想と信念の強軍として評価していた最精鋭部隊に、中朝国境沿いの緩衝地帯の封鎖任務を任せたが、国境警備隊と変わらぬ反社会主義・非社会主義、無規律な行為を行うようになった」(情報筋)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面安全部(警察署)、保衛部(秘密警察)、反社会主義・非社会主義連合指揮部が、軍に提出した資料によると「国から教わった格闘術で肩で風を切る兵士たちが、カネの味を覚え、金(ゴールド)、銀、ピンドゥ(覚せい剤)を身に付けて中国側に渡る行為が頻繁に発生している」という。
地元の安全部と保衛部、国境警備隊は、地元住民からワイロを受け取り、密輸や脱北などを幇助し、地域ぐるみで違法行為を行っていた。その構図を打破するため、金正恩総書記の厳命を受けて派遣されたのが暴風軍団だったのだが、2年以上が経つ中で結局、暴風軍団が直接違法行為に加担するようになったということだ。
(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面今回の撤退を、地域住民は歓迎している。密輸で生活していた地域住民だが、暴風軍団のせいで密輸ができなくなっていた。彼らの撤退により活路が開け、「郡民すべてが万歳を叫んでいる」(情報筋)とのことだ。
縄張りを侵されていた地元の安全部と保衛部、国境警備隊も喝采をあげているだろう。
(参考記事:北朝鮮で特殊部隊と国境警備隊の衝突続く…「発砲」寸前の事態に)今のところ、撤収命令が出されたのは一部に過ぎず、同じ慈江道でも満浦(マンポ)、慈城(チャソン)、中江(チュンガン)などに派遣されている暴風軍団に対する撤収命令は出されていない。