昨年から、国境警備の強化要員として中国との国境地帯に派遣されている朝鮮人民軍（北朝鮮軍）の特殊部隊「暴風軍団」（第11軍団）。今までも様々なトラブルを引き起こし、地域住民から疎んじられる存在となっていたが、今度は内部で殺人事件が発生した。
咸鏡北道（ハムギョンブクト）のデイリーNK内部情報筋によると、年明け早々、暴風軍団の現地指揮部所属の大隊長連絡兵を務める中級兵士（一等兵に相当）が、大隊長と軍医を射殺する事件を起こした。
この連絡兵は今月3日、通常の勤務が終わった後、大隊長と軍医から使いを頼まれたが、軍医の求めたものを確保することができず、暴力を振るわれた。それに怒った連絡兵は、自宅にいた大隊長と軍医を銃で撃ち殺したという。
闇夜に響いた銃声に村は大騒動となった。暴風軍団ではなく、国境警備隊が事件をすぐに察知し、平壌の国家保衛省（秘密警察）に報告した。国家保衛省はすぐに提議書を提出し、現地に駐屯する暴風軍団の人員全員を、年に1〜2回しか運行されない、穏城（オンソン）発―海州（ヘジュ）行きの特別列車に乗せて撤収させ、平安南道（ピョンアンナムド）徳川（トクチョン）に駐屯していた別の人員に総入れ替えさせた。
撤収させられた人員は集中的な思想検討（思想調査）を受けており、今回の事件の容疑者が属していた大隊の兵士らは、派遣先の咸鏡北道と両江道（リャンガンド）で、事件当時に何をしていたかを自主検討書（自己批判書）数十枚に綴らされた。
人気記事：「女性１６人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面2人を殺害した連絡兵は、事件直後に家から飛び出して自ら命を絶とうと電信柱に頭突きを繰り返したものの、深手にはならず、入院した病院で軍保衛部（秘密警察）の取り調べを受けている。死刑または無期懲役刑が確実と見られる。
（参考記事：「女性１６人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面）
今回の事件は、両江道に国境警備目的で派遣されている第7軍団もとばっちりを受け、所属する兵士は緊急講演会（思想学習の会）に参加させられるなどしている。また、24時間武器携帯という既存の規則を変更し、通常の勤務時間が終われば、武器を武器庫に返納する形となった。
人気記事：「女性１６人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面国境警備隊が、地元住民とのしがらみで効果的な国境警備ができていないことから、警備強化のため派遣された暴風軍団と第7軍団だが、脱北幇助で逮捕者を出すなどトラブル続きだ。
（参考記事：金正恩命令も無視…北朝鮮「特殊部隊」のやりたい放題）元々、建設中のコンクリート壁（正確にはコンクリート柱とフェンス）と高圧電線が完成し次第、撤収することになっていたが、その前に撤収させられるのではないかとの噂が飛び交っている。
情報筋は、現在行われている冬期訓練が終われば、最終命令が下されるのではないかとしつつ、国境警備隊、暴風軍団、第7軍団の管轄区域を交換する形で大幅な異動が行われる可能性もあると見ている。
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コロナ鎖国が解除されて、暴風軍団と第7軍団がさっさといなくなればいいと望んでいる地域住民は、未だに撤収の兆しが現れないことに、「永遠に（国境を）閉じるつもりではないか」「われわれの生命線を絶つつもりだ」などと嘆いているという。また、他の国ではワクチン接種を受けた上で他地域への移動ができるのに、なぜ北朝鮮は1年も2年も国境を閉じたままにするのかと不満を口にしているとのことだ。