妊婦もエリートも崩れ落ちる、金正恩「見せしめショー」の衝撃場面

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昨年の「反動的思想・文化排撃法」の制定以降、北朝鮮では韓流ドラマ、映画などを見たというだけで重罪に処される事例が後を絶たない。先日は、韓国映画をたった5分見ただけの14歳の少年に、14年の労働教化刑(懲役刑)という極めて重い判決が下された。

コンテンツの流通に関わり、処刑されるケースもある。公開処刑の恐ろしさを、北朝鮮の人々は骨身にしみて知っている。

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だが、恣意的な法運用がなされている北朝鮮では、同じ罪を犯しても、責任者のさじ加減ひとつで、生き残れる場合もある。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、そんなケースについて伝えた。

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道内の金策(キムチェク)市の城津(ソンジン)製鋼所の青年同盟(社会主義愛国青年同盟)の書記2人と複数のイルクン(幹部)は先月15日、書記の側近の家に集まり、誕生パーティを開いていた。若者に思想教育を行い、韓流を取り締まる立場の彼らだが、それは表向きの姿だ。

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彼らとて韓流を楽しみたい若者に変わりなく、K-POPをかけて踊っていたのだが、その場にいなかった別のイルクンの信訴(告発)で、その場にいた人たちは非社会主義(風紀紊乱)行為と国家防疫秩序違反で逮捕された。

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イルクンが所属する朝鮮労働党の細胞(末端組織)は、罪を悔いているという内容の反省文と共に、一回だけ許して欲しいという内容の手紙を道党(朝鮮労働党咸鏡北道委員会)に送った。

その後の今月4日、道党、青年同盟、安全部(警察)、保衛部(秘密警察)、検察のイルクンが参加し、城津製鋼所文化会館で、彼らを断罪する公開従業員総会と思想闘争会議が3時間に渡って開かれた。

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これは「罪」を犯した本人らだけが自己反省した上で、様々な人から入れ代わり立ち代わり批判を受け続けるという「吊し上げ」だ。最後に彼らに対する処分が言い渡されたのだが、それはこんな内容だった。

「処罰を受けるべき厳重な事件ではあるが、一時的に思想的な間違いを犯したものの、普段は党と祖国のために一所懸命働いてきた者たちであることから、教養処理に処する」

これは、罰金刑の次に軽い処罰で、事実上無罪に等しいと言っても過言ではない。それを聞いた本人たちとその家族はその場で崩れ落ち、激しくむせび泣いた。場内のあちこちでも、泣き出す人がいたとのことだ。教化所(刑務所)か管理所(政治犯収容所)送り、さらには処刑という重罰が下される可能性もある事案だけに、緊張が一気に解けたのだろう。

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軽い処分となったことについては、「若者たちを党が暖かく抱きしめて、社会主義の第過程で堂々とした青年同盟のイルクンとしての人生を送らせるために、常に心を尽くしていらっしゃる金正恩元帥様と母なる党の崇高な意志」という説明がなされたという。

つまりは民衆の恐怖心を逆手に取り、金正恩氏の「慈悲深さ」を強調するショーだったのだ。

これは、金正恩政権になって多用されるようになった宣伝手段だ。2014年10月には、なんと妊婦を処刑場に引き出しておきながら、「母親の罪を新たに生まれる生命にまで問うのはわが党の人徳政治に反する」とした金正恩氏の緊急指令で、直前に執行を中止させたこともあった。

話を今回の事件に戻そう。若者への思想教育を強化する内容の青年教養保障法が成立した後での「重大事件」ということで、道党と法務部は慎重に考慮し、企業所の全従業員、党員、青年同盟、職盟員(朝鮮職業総同盟のメンバー)は全党強化、全党団結に積極的に貢献し、お互いが間違いを起こさないように教養(教育)し、闘争して導くべきという言葉で、この日の会議は終了した。

結果がどうであれ、北朝鮮の若者は、韓流ドラマ、映画を見て、K-POPを聞くという、他のどの国でも罪に問われないことで、多かれ少なかれリスクに晒され、人生を狂わせているのだ。

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