泥だらけの道を行進中に手足が揃っていないと上官から蹴りつけられる。何か間違いを起こしたのか、上官から怒鳴りつけられる。
いずれも、中国側から国境の川越しに撮影された朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の女性兵士の悲惨な生活を収めた動画に写った光景だ。この動画には、非常に興味深いシーンがいくつも収められている。
(参考記事:【動画】北朝鮮「女性兵士」たちの、やり切れない日々)
YouTubeチャンネル「アリランday」で動画が公開されたのは今年8月。緯度の高い北朝鮮北部とは言えども、相当の暑さのようで、掘っ立て小屋のような兵舎の屋根に草を載せていく光景も動画に収められている。動画を見る限り、兵舎は恒久的な施設ではないように見受けられることから、彼らは国境警備のためにこの地域に派遣された特殊部隊「暴風軍団」の可能性がある。
(参考記事:「飢えた特殊部隊員」が国の食糧庫を襲撃…北朝鮮軍の末期症状)また、しゃがみこんで葉を磨く男性の軍官(将校)の前で、水を入れた手桶を持って待つ女性兵士の姿も見える。生殺与奪を握る軍官に対して、召使いよろしく振る舞わなければ生き残れないのだろう。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ナレーションを担当する脱北者の女性2人は、朝鮮労働党に入党するにも軍官の覚えがめでたくなければダメだとし、「入党するのに、女性たちは、その……」と言葉につまりながら、軍内で横行する性上納強要の実態を示唆した。
(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為)北朝鮮当局は現在、脱北、密輸をより効果的に防止するために、国境線沿いにコンクリート壁と高圧電流の流れる電線の設置を進めているが、動画には重そうなコンクリートの柱を女性兵士が5人がかりで担いで歩き、堤防ぞいに立てるシーンが写っている。コンクリート壁の設置工事の様子を収めた非常に貴重な動画だ。
(参考記事:北朝鮮の国境警備に深刻な混乱…政府が国民に「厳重警告」)動画にはさらに興味深いものが写っている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面垣根に囲まれた掘っ立て小屋。玄関の上には白地に赤文字で「隔離室」と書かれている。敷地の入口では、防毒マスクを頭の上に載せ防護服を着た女性3人が、トゥルチュク(クロマメノキ、ブルーベリーの一種)を食べながら談笑している。これは軍当局が設置した、新型コロナウイルスの疑い患者を隔離する施設と見て間違いないだろう。
北朝鮮からは、コロナそのものではなく、隔離施設の環境の劣悪さで病気が悪化して亡くなったとの報告が複数入ってきているが、この動画を見ると、その環境のひどさがよくわかる。
(参考記事:「コロナ隔離中、給食横取りで放置死」北朝鮮軍の末期症状)