北朝鮮の国境警備に深刻な混乱…政府が国民に「厳重警告」

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一家4人が親しくしていた国境警備隊員を睡眠薬で眠らせ、国境の川を超えて脱北する事件。国境警備隊の隊員が勤務地を離脱して行方をくらました事件。女性とその一家、手助けしていた兵士2人を含めた5人が脱北する事件など、北朝鮮では国境警備の強化とは裏腹に、今月に入って脱北事件が続発している。

いずれの事件も国境警備隊と関連しており、国境警備の規律は崩壊寸前だ。

昨年8月には、任務を怠った多数の国境警備隊幹部が公開処刑された事件もあり、北朝鮮当局はかねがね、警備の立て直しに頭を悩ませてきた。

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今月12日、咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)など国境に接した地域に対して、中央から「個人宅に軍人を入れるな」との指示が下された。

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今後、軍人が民間人の家を訪れる際には、人民班(町内会)を通じて洞事務所(末端の行政機関)に届け出ねばならず、違反した場合には批判書を書かされ、公開思想闘争(吊し上げ)の場に立たされたり、罰金を科されたりするなど処罰されることになった。

法律、命令、指示の類が下された直後には、見せしめとして適用を強化するのが北朝鮮のやり方だが、運悪くひっかかってしまったのは、会寧に住む40代女性のキムさんだ。

(参考記事:少女の頭をこん棒で…北朝鮮「見せしめ重罰」に見る暗黒時代

キムさんは18日、年端も行かない国境警備隊の隊員が空腹を訴えているのを見かねて、家に上げてトウモロコシ飯一膳を食べさせたのだが、これが「国境警備隊の隊員をそそのかして渡江(密輸、脱北)を試みようとした」として、洞事務所長と地域担当の保衛員(秘密警察)から糾弾された。

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決して豊かとは言えない暮らしをしているキムさんだが、腹をすかせた隊員を見て兵役に送り出した息子のことを思い出し、ご飯を食べさせただけなのに、逆賊扱いされてしまったのだ。「軍民一致を叫び、物心両面で軍隊を助けようとすることとは相反する形」だと情報筋は指摘した。

同日、地元駐屯の国境警備隊27旅団は、隊員に対して、個別で民間人の居住地に行くな、摘発時には15日以上の謹慎と降格処分にするとの警告を下した。

隊員らにとって、今回の指示は非常に頭の痛いものだ。彼らは、個人の持ち物を「主人の家」と呼ばれる民間人の家に預け、必要なときに訪れて取り出していたのだが、それができなくなってしまったのだ。

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国境警備隊の隊員と民間人の行き来を禁止する措置が取られたのは、脱北事件が多発しているからに他ならない。

地元住民の多くは密輸で生計を立ててきたが、顔見知りの国境警備隊の隊員に手間賃を払って見張りや手招きをしてもらうのが一般的だった。また、隊員も貴重な現金収入が得られ、除隊後に社会生活を行うに必要な蓄えにできた。地域における違法行為の日常化は、国境警備隊と地域住民のコラボと言っても過言ではなかった。

国境警備を強化するとして、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の特殊部隊「暴風軍団」を大挙投入したり、国境線沿いにコンクリート壁と高圧電流の流れる電線を設置したりするのは、国境警備隊が国境警備という本分を果たせていないからに他ならない。

(参考記事:金正恩が設置した高圧電線、電力不足で「ただのケーブル」

ただ、「コラボ」で地域経済が回ってきたことを考えると、地域住民、隊員双方からのかなりの反発が予想されるというのが情報筋の見立てだ。

壁と電線が完成すれば暴風軍団が撤収することになっているが、それに伴って規制が緩和されれば、また抜け穴を見つけて密輸に励む状態が戻ってくるかもしれない。北朝鮮の人々は、国の命令を忠実に守って餓死するほどバカ正直ではないのだ。