韓国のケーブルテレビ局、チャンネルAが2011年から放送している「いま会いに行きます」。韓国在住の脱北者が北朝鮮の政治、社会、生活、文化について語る、人気のバラエティ番組だ。
北朝鮮は以前から、脱北者のこうした動きに神経をとがらせてきた。
2017年には、同番組などで「脱北美女」タレントとして活動していたイム・ジヒョンさんが突然消息を絶ち、その後、北朝鮮の対外向けプロパガンダメディア「わが民族同士」に登場したことがあった。
彼女がいかにして北朝鮮に戻ったかは未だミステリーのままだが、中国におびき出され、北朝鮮の国家保衛省(秘密警察)の要員らに「全身ギプス」で拉致されたとの説が根強く囁かれている。
(参考記事:美人タレントを「全身ギプス」で固めて連れ去った秘密警察の手口)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面そんな物騒な出来事が起きた後も、脱北者のメディア出演は飛躍的に増え、今ではYoutubeにも活躍の場が広がっている。
これが北朝鮮にとっては面白くないのだろう。北朝鮮当局は、国内に残った脱北者の家族に圧力をかけてやめさせるようとしている。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、国家保衛省(秘密警察)の海外反探局、総合局、政治局の人員3人が今月15日から道内の清津(チョンジン)、穏城(オンソン)、茂山(ムサン)、慶源(キョンウォン)、会寧(フェリョン)など脱北者を多く出した地域を回っていると伝えた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面彼らは、大量の書類を積んだトラックに乗り、各地の保衛部に書類を配布、脱北者家族に手渡すように指示している。そこに書かれている内容は、韓国のテレビやYoutubeで活動している脱北者個々人に関する情報だ。国家保衛省は、毎日せっせと韓国のテレビのみならず、Youtubeまでモニタリングしているということだ。
彼らは保衛部に資料を手渡し「いかなる形でも、顔出しして祖国(北朝鮮)について悪宣伝する越南逃走者(脱北者)の家族は、今後6親等まで(朝鮮労働党への)入党、学校推薦、幹部事業(幹部への登用)、(平壌への入市に必要な)平壌市承認番号の発行から無条件で除外する」と脱北者家族に伝えるよう指示した。
指示に基づき、現地の保衛員は脱北者家族を訪ね、「南朝鮮(韓国)にいるお前の家族がいつどこで何回、悪宣伝を行ったか知っている」と資料を見せて、顔出しして悪宣伝を行ってはいけないと伝えたとのことだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、脱北者本人が公開で活動を行わない場合には、家族にはその責任を問わないのが党の方針だとも伝えられた。両者が連絡を取り合っていることについては認識しつつも、直接の言及を避け、YouTubeなどでの活動の抑止を優先した形だ。
こうした警告は、もしかしたら短期的には効果を発揮するかもしれない。しかし、韓国における経済的足場が脆弱な脱北者にとって、再生回数を稼げるならば、YouTubeは貴重な収入源だ。また脱北者の中には、北朝鮮の現実を広く知らせたいとの意欲を強く持っている人々も少なくない。
北朝鮮当局の「警告作戦」は続くだろうが、「イタチごっこ」になる可能性が高いように思える。