北朝鮮の金正日総書記は1984年8月3日、平壌市軽工業製品展示場を現地指導した際に「廃材や副産物を使った人民消費品(生活必需品や食料品)生産運動を全群衆的に拡大実施せよ」との指示を下した。これを8.3人民消費品創造運動と呼ぶ。
品物を自宅で作りたいと希望する人に対して当局は許可を出し、それらの製品を扱う専門店も登場した。これが、現在の市場経済の基礎となっているが、このような製品を8.3製品と呼ぶ。
それから36年。北朝鮮はコロナ鎖国により輸入がストップし、深刻なモノ不足に苛まれている。当局は改めて8.3製品の生産を呼びかけたが、すでに海外のアパレル製品に接して久しい消費者の反応は極めてよくないようだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の工業省の幹部によると、今年1月の朝鮮労働党第8回大会で金正恩総書記が示した軽工業部門の原材料の国産化、再資源化(リサイクル)という発展方向に基づいた、中央党(朝鮮労働党中央委員会)の指示に従い、道内の軽工業品工場が、廃材や副産物を使った製品の生産を始めた。
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「5カ年計画の期間中に国営商業体系を回復し、国産の生活必需品販売を正常化するとの目標を掲げて、軽工業製品の生産、品質向上を目指すというのが中央党の目論見だ」と説明したこの幹部は、こんな現場の声を伝えた。
「ほとんどの(軽工業)工場は、著しい生産財不足に苦しめられており、工場の幹部の間で、第8回党大会の決定課題は実現不可能という声が上がっている」
当局は、定期的に総和(総括)を行い、他の工場の生産量を工場幹部に見せつけて、プレッシャーを与える形で競争を煽り、生産量を増やそうと目論んでいる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面しかしこの幹部は、別の工場の支配人が「外国から原材料を取り寄せられない状態で、国内にある原材料だけ使って純粋な国産品を作ろうというのは、現場の実情を考慮していない机上の空論だ」と話していたと説明。支配人はまた「いくら幹部にプレッシャーをかけたところで、薪から水が出ることを望むようなものだと、当局の政策に不満を示した」と幹部は伝えた。
慈江道(チャガンド)の軽工業部門の幹部は、上からの指示に従い道内の工場でも8.3生産の製造が始まったが、アパレル工場では、一般的な製品を作るだけの生地が得られず、国から支給される古着しか材料がない状態だと、現状を語った。ある工場では古着を解いて布にして、それを裏返して服を仕立て、国営商店に卸すことで、上から押し付けられた生産計画をこなしているという。
しかし、中国製や日本製、韓国製の質が高くデザインも洗練された服に慣れ、目の肥えた消費者は、ひと目見てボロボロであるのがわかるほどの8.3製品など、見向きもしないという。
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消費者心理を完全に無視した意味のない政策だからと従わないわけにはいかず、批判を避けるための数合わせのために、売れもしない在庫がどんどん積み上がっていく状況だ。
かつて計画経済を実施していた旧共産圏では、需要と供給のミスマッチで必要な製品が不足し、不必要な製品が大量に作られる状況にあったが、北朝鮮はそのような愚を、21世紀に入って20年も経った今でも繰り返しているのだ。
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