警視庁は4月から、公安部の外事部門に朝鮮半島を担当する新たな課を設立し、現行の3課体制から4課体制に移行する。
これまでは外事1課がロシアなど欧州各国を、外事2課が中国と北朝鮮などアジアを、外事3課が国際テロ組織を担当してきた。4月からは北朝鮮担当部門が独立して外事3課となり、国際テロ担当は外事4課となる。これに伴い、中国・北朝鮮担当はともに増員されるという。
しかし率直なところ、これによって北朝鮮に対する情報収集力がどれほど高まるかは疑問だ。日本の北朝鮮に対する制裁強化で両国を往来する人の流れが細り、北朝鮮の情報が日本に流れ込まなくなったからだ。
かつて日本の情報当局は、北朝鮮情報の収集力で欧米などから高い評価を得ていた。北朝鮮を支持する在日本朝鮮人総連合会の存在もあって、日本国内に北朝鮮に関する様々な「レア情報」が蓄積されていたからだ。
たとえば韓国紙・東亜日報記者で、脱北者であるチュ・ソンハ氏は自身のブログで、1980年に処刑された北朝鮮の女優、禹仁姫(ウ・イニ)の写真が日本で見つかったというエピソードを紹介している。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面(参考記事:【写真】機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇)
1960〜70年代の北朝鮮映画界にトップスターとして君臨し、著名な脚本家である夫のリュ・ホソンとの間に2人あるいは3人の娘をもうけていた禹仁姫だが、実は金正日党書記(後の総書記)と愛人関係にあった。そしてある事件をきっかけに、金正日は口封じのため、きわめて残酷な方法で彼女を処刑したのだ。
チュ氏によれば、北朝鮮はその後、禹仁姫の存在を完全に消し去るため、北朝鮮当局は「彼女が登場したすべての雑誌、出版物、カレンダーからその顔を削除した。すべて家屋を徹底的に調べ、彼女が登場した図書から顔写真を破り取り、出演した数十作の映画もほかの女優をヒロインにして撮りなおした」という。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、「韓国に来た後、ここには北朝鮮の過去の写真や映像資料があるので、見つかるかもしれないと思い10年以上も探し回ったが、発見できなかった。何年か前に記事執筆のため国立図書館北朝鮮資料センターへ行き、北朝鮮の図書をすべて調べたが、見つからなかった」とのことだ。
ではそのような写真が日本のどこにあったかと言えば、かなり以前に出版された北朝鮮に関する書籍の中に収録されていたという。知ってみれば、どうということのない話だ。
しかし情報というものは、このように歴史に埋もれた断片の積み重ねから、現在の状況にとって有益な結果を見出せることもある。日本国内に埋もれた北朝鮮情報の断片の価値を、軽視すべきではないかもしれない。