韓国の文在寅政権と検察当局との対立が激しさを増している。秋美愛法相は24日、与党や政府高官の不正に鋭く切り込んできた尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長の職務執行停止を命じた。尹氏はこれに反発し、裁判所に命令の執行停止を申し立てた。その裁判が30日に行われる。
秋美愛氏はすでに指揮権を乱発し、尹錫悦氏が捜査指揮を出来ないよう手足を縛っている。尹氏本人が「世間が言うように、私は植物総長も同然」だと語っているくらいだ。それでも秋氏が攻撃の手を緩めないのは何故か。自分の息子が兵役に絡む不正疑惑で捜査対象にされた私怨もあるだろう。だがそれより大きいのは、尹錫悦氏を検察から追い出して政権に服従する人物を総長に据え、検察を完全に掌握するためだろう。
韓国検察は今、文在寅政権の致命傷になりかねない事件をいくつか抱えている。ひとつが、月城(ウォルソン)原子力発電所1号機の経済性評価ねつ造疑惑だ。これは脱原発を掲げる文在寅大統領の方針に従って同原発1号機を早期に閉鎖するため、発電単価などの効率が著しく低くなるよう、担当官庁が評価報告書をねつ造したというものだ。
そして次に、韓国史上最大の金融詐欺を働いたライム資産運用とオプティマスファンドから、李洛淵(イ・ナギョン)共に民主党代表(前総理)をはじめとする政権と与党の関係者が利益を得ていたとする疑惑だ。これらの金融詐欺の被害額は1兆6千億ウォンとも2兆ウォン以上とも言われており、政権・与党の関与が明らかになれば、国民は怒りを爆発させるだろう。
しかし何といっても、文在寅大統領にとって致命的なのは、青瓦台が組織的に動いた蔚山(ウルサン)市長選挙介入事件だろう。この事件ではイム・ジョンソク前青瓦台秘書室長が捜査のターゲットになっており、その関与が明らかになれば、「イム・ジョンソクだけでなく、文在寅本人の弾劾と逮捕も視野に入る」(韓国人ジャーナリスト)と言われている。
(参考記事:文在寅に迫る「Xデー」蔚山市長選挙介入事件の全貌)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
もっともこの事件の捜査は、今年1月にイム・ジョンソク氏を含まない13人が起訴されて以降、実質的にストップしている。1月2日に就任した秋美愛法相が、同月だけで2回、「大虐殺人事」と呼ばれる検察幹部の大規模な配置替えを強行し、同事件の捜査に当たっていた人員を地方などに分散させてしまったからだ。
(参考記事:「文在寅一派はこうして腐敗した」韓国ベストセラーが暴く闇)そうまでしてもなお、政権が安心出来ないということは、蔚山市長選挙介入事件の闇がいかに深いかを物語っている。韓国では、秋美愛氏と尹錫悦氏のバトルが激しさを増すほど、「どうして大統領が仲裁しないのか」との声が強まっている。それなのに、文在寅氏は沈黙を守っている。もしかしたら彼こそが、尹錫悦氏が消えることを最も期待しているのではないか。
(参考記事:豪州が打ち砕く、文在寅に残された「たったひとつの希望」)