北朝鮮は10日、日本の国会に当たる最高人民会議を開催した。実は、北朝鮮の名目上の国家元首は、金正恩党委員長ではなく同会議常任委員長の崔龍海(チェ・リョンヘ)氏である。
崔龍海氏は金正恩氏の祖父・故金日成主席の戦友である崔賢(チェ・ヒョン)元人民武力部長の息子であり、北朝鮮でも屈指の名門の出身である。それだけに、大規模な粛清が繰り返されてきた北朝鮮政治の中でしぶとく生き残り、2017年には同国の政務と人事を掌握する朝鮮労働党組織指導部長に就任。名実ともに、金正恩氏に次ぐナンバー2の座を固めた――かのように見えた。
美女の歯を抜き
彼が本当に金正恩氏から絶大な信頼を得ているなら、そのまま組織指導部長にとどまってもおかしくはなかった。しかしその後、同部長のポストは李萬建(リ・マンゴン)氏に交代した。それでも、李氏は崔氏と近いとされる人物であり、名目上とはいえ国家元首の座に座った崔氏の地位は盤石かと思われた。
ところが、今年2月29日に開かれた朝鮮労働党政治局拡大会議で、李氏は不正を働いたとして解任されてしまった。入れ替わるように、党内で存在感を増しているのが金正恩氏の妹・金与正(キム・ヨジョン)党中央委第1副部長である。
韓国紙・中央日報によれば、韓国国会立法調査処は先月31日に発表したレポートで、こうした動向について次のように述べている。
「北朝鮮の首領体制内において、崔竜海氏の地位強化は自然とけん制につながり始めた」
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「今後、対北朝鮮制裁と新型肺炎事態で住民の間で経済難に対する不満が提起されれば、北朝鮮権力の第二人者である崔龍海氏は『責任論』を避けられないものとみられる」
実際のところ、こうした流れを見ながら「来るべき時がきたか」と思っている北朝鮮ウォッチャーは少なくないかもしれない。前述したとおり、崔氏は北朝鮮きっての名門の出ながら、自身の性欲を満たすため若く美貌の女性の歯をぜんぶ抜いてしまうなど極悪三昧を働き、きわめて評判の悪い人物だからだ。
(参考記事:美貌の女性の歯を抜いて…崔龍海の極悪性スキャンダル)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面金日成氏に始まる「白頭の血統」に最も近く、それ故に利害も深い所で共有していると言える崔龍海氏の家門は、母親が在日朝鮮人出身で国内に刑罰を持たない金正恩氏ら兄妹が権力を固めるまで、ほかの部下たちを統制する上で便利な存在だったかもしれない。しかし、「その時が」来たらいつでも粛清ターゲットに転落する。それが北朝鮮の体制なのだ。