米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋の話として伝えたところによると、現地で「あらゆる反社会主義、非社会主義的な行為を徹底して叩き潰そう」と題した講演会が開かれたのは今年5月のことだ。
その内容は、「社会主義秩序をびん乱させているニセ夫婦どもの不倫行為を強力犯罪として集中取り締まりを行い、処罰する」というものだ。
「サウナ不倫」が流行
ここで言われている「ニセ夫婦」とは、主には婚姻届を出さずに同棲しているカップルのことだが、「家庭を持ちながら愛人とみだらな関係」を持っている男女も含まれる。「革命的に恋愛、結婚し、革命的な家庭を築く」ことを国民に求める朝鮮労働党にとって、不倫は排撃すべき行為なのだ。
こうした動きについては以前の記事でも言及したが、同じ時期、平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋も、主に女性を対象にした講演会が行われていると伝えていた。
一連の講演はとかく評判が悪かったという。その内容とは次のようなものだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「中年女性が愛やら、理想やらに舞い上がり、目が合った男性と不倫関係を結ぶ行為は、自らを守れず、家庭をあっさりと捨て去るゴミ同然だ」
「家庭を守るべき女性が病弊を正せなければ、今後社会主義制度も捨てかねず、深刻な階級闘争だ」
「夫をバカにして立てることを知らない女性も、教養(思想教育)の対象だ」
これを聞かされた女性らの間からは「呆れた」との反応が出ていたという。
北朝鮮では、男性らは国営の工場、企業所に出勤することを義務付けられているが、給料も配給もロクにもらえない。そのため妻が市場で商売をするなどして、家族の生計を支えるのが一般的になっている。そのため女性らの自我は強まっており「なぜ夫を立てなければならないのか」との反応が出るのも当然だろう。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮当局がこのような行動に出たのは、金正恩党委員長が旗を振る風紀取り締まりキャンペーンの一環としてだ。
北朝鮮の金正恩党委員長は、2017年12月23日の朝鮮労働党第5回細胞委員長大会で演説し、「非社会主義的現象の根絶」を訴えた。非社会主義現象とは、文字通り北朝鮮が標榜する社会主義の気風を乱すあらゆる行為を指す。
不倫そのものが社会主義の気風と関係あるものかどうかはさて置き、拝金主義がはびこる最近の北朝鮮では、富裕層を中心に男女関係の退廃も進んでいるとされ、「サウナ不倫」などが流行しているとされる。
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一連の「不倫」排撃は、それが拝金主義の延長線上にあるものとの認識によるのかもしれないが、それで女性を集中攻撃するところが、男性至上主義でやってきた北朝鮮当局の旧態依然を表していると言えるかもしれない。