マンション崩壊で多数が下敷き…金正恩氏の「指示」もムダ

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北朝鮮でまたもや建設中の建物が崩壊する事故が起き、多数の死傷者が発生した。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、平壌市恩情(ウンジョン)区域の地境洞(チギョンドン)のマンション建設現場で、建物が崩れ多数の労働者が下敷きになり、3人が死亡し、多数の負傷者が発生した。

(参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出

事故の原因は、労働者が食べ物欲しさにセメントと鉄筋を売り払い、規定通りに施工しなかったことだと情報筋は指摘した。

「セメントと鉄筋が規定通りに入らず、砂、砂利、土の方が多かったため、冬の間に凍ってしまっていた。それが春になって溶けて建物が崩れた」(情報筋)

建設現場での資材の横流しは日常茶飯事だ。それによる資材の不足と、「速度戦」と呼ばれる工期達成偏重の北朝鮮版やっつけ仕事が相まって、各地で事故が多発している。

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平壌市内では2014年、完成したばかりのマンションが崩壊して500人が犠牲になる大惨事があった。

昨年9月には、金正恩党委員長が視察した清津(チョンジン)かばん工場で、工事途中に床が崩落し、巻き込まれた女性労働者4人が死亡、数十人が負傷した。工場は金正恩氏の激しいダメ出しを受けて施設の建て直しを進めていたが、その最中の事故だった。

亡くなった労働者の多くは、農村出身のコチェビ(ストリート・チルドレン)だった。「建設コストを抑えるために地方のコチェビを連れてきて仕事をさせていた」(情報筋)とのことだ。

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北朝鮮の「経済打算書」(損益計算書)によると、建設労働者の日給は2ドル(約220円)。中国(遼寧省丹東)の最低賃金の時給14元(約230円)とほぼ同じ額だが、それでも労働者の平均的な月給の4ヶ月分を1日で稼いでしまう計算となる。

機械が少なく人海戦術で行うだけあり、人件費がかさむ。そこで、少しでも安く使えるコチェビを使おうと考えたのだろう。社会の最下層にいる彼らは、建設現場に動員され、怪我をしたりしてもまともな補償一つ得られない。

2014年6月20日の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、金正恩党委員長が当時建設中だったタワーマンション団地の現地指導を行った場で、「建設においては一にも二にも質の保証に優先的な関心を置くべき」「千年責任、万年保証のスローガンの元に、建築物を百点満点で完成させよ」と指示したと報じている。さらに最近では、「安全を優先せよ」との指示も下すようになったとされる。

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しかし問題の背景には、資材を横流ししなければ、給与だけでは労働者が生計すら立てられない歪な経済構造がある。それが変わるまでは、金正恩氏が何を言おうと、現場は「馬耳東風」と聞き流すだけだろう。