金正恩氏が恐怖の「思想検閲」指示…米朝首脳会談の失敗で

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北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が最近、党統一戦線部の思想検閲を実施するよう、党組織指導部に指示を下したと、デイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。対米・対韓国外交で所期の目的を達成できなかったことに対する批判と懲罰を通じ、統一戦線部の思想を検閲するよう命じたという。

情報筋によれば、金正恩氏は今月10日、組織指導部に対し、直接指示を出したという。金正恩氏は、統一戦線部の幹部と実務スタッフたちが米国の戦略を見誤ったためにベトナム・ハノイでの米朝首脳会談が決裂したと指摘。特に、統一戦線部と外務省が「これは私の仕事、これはあなたの仕事」という風に縦割りで動いた結果、韓国政府との対南事業でも足踏みを続けている――と問題視したとのことだ。

北朝鮮では過去、失政が露呈するたびに、こうした検閲が繰り返されてきた。その結果、すべての責任を負わされた幹部が処刑されたこともある。

(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

またそこまで行かずとも、「革命化」などの処分が下された例は枚挙に暇がない。革命化とは再教育のことだが、その内容は、いくつか講義を受ければ済むような生易しいものではない。贅沢に慣れた幹部が僻地の農村や工場に追いやられ、ボロボロになるまで重労働を強いられることもあるのだ。

(参考記事:側近「激ヤセ写真」に見る金正恩式「再教育」の恐怖

韓国の情報機関・国家情報院は24日、国会情報委員会に対し、これまで統一戦線部長を兼務していた金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長がその任から外れ、新たな部長にはチャン・グムチョル氏が就任したもようだと報告した。

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これらの情報がすべて事実ならば、思想検閲の件と部長交代は無関係ではなかろう。実際、チャン・グムチョル氏の党中央委員会の「部長」への就任が明らかにされたのは、10日に開かれた党中央委員会第7期第4回総会でのことだった。前述したとおり、金正恩氏が思想検閲を指示されたとされる日と、同じ日付である。

では、統一戦線部長から外された金英哲氏は、処刑あるいは粛清されてしまうのか。「それはないだろう」というのが北朝鮮ウォッチャーの大方の見方だ。

そもそも、統一戦線部は対韓国や対日本を専門としてきた機関であり、対米外交の担当部門ではない。それにもかかわらず金英哲氏が対米外交の前面に出たのは、マイク・ポンペオ米国務長官のカウンターパートを務める必要があったからだ。ポンペオ氏が最初に訪朝した際の肩書は中央情報局(CIA)長官だった。そのため自然と、北朝鮮の諜報工作機関である偵察総局長を歴任した金英哲氏に白羽の矢が立つ形になったのだ。

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しかし、こと対米外交については、経験も情報も人材も、統一戦線部より外務省に蓄積がある。情報筋によれば、金正恩氏は統一戦線部と外務省の「縦割り」を批判したというが、それは金英哲氏や外務省の幹部たちにとっては酷な話だ。なぜなら北朝鮮の行政機関が極端な縦割りになっているのは、独裁体制に挑戦する勢力が出てこないよう、情報と権力を最高指導者に集中させるためだからである。

確かに、金英哲氏が金正恩氏のロシア訪問に同行しなかったばかりか、送迎の場でも姿が確認されなかった理由は気になる。それでも、同氏がただちに党副委員長から降格されたり、国務委員から外されたりするようなことはないように思える。なぜならそれをしてしまうと、金正恩氏は自ら、ハノイでの米朝首脳会談が大失敗だったことを認める形になってしまうからだ。

(参考記事:「死刑囚は体が半分なくなった」北朝鮮、公開処刑の生々しい実態