北朝鮮で、しばらく途絶えていた公開処刑が再開されたもようだ。
咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋は今月はじめ、韓国デイリーNKとの電話取材で、「2月初め、咸興(ハムン)市の沙浦(サポ)区域にあるヨンデ橋の下の空き地で、薬物密売人らの公開裁判があった。この裁判で、首謀者とされた41歳の男が死刑を宣告され、ただちに銃殺された。さらに2人には無期懲役、1人に20年の懲役判決が下った」と伝えた。
(参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇)2015年頃までは頻繁に情報の入ってきた公開処刑だが、北朝鮮は国際社会の目を気にしてか、ここしばらく控えていたもようだ。このような形で銃殺刑が執行されたとの情報が入ってくるのは、久しぶりのことだ。
情報筋によると、被告らは約10年にわたり咸興市で薬物を密売してきたが、昨年10月に17キロもの薬物を持って列車に乗り、中特との国境地帯に向かっていたところで逮捕された。そして、この事件の報告を受けた金正恩党委員長は「無慈悲に掃討せよ」と語り、薬物密売組織のせん滅を命じたという。
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特にこの事件は、中国側の薬物シンジケートと連携して行われていた事実が問題視され、中国の公安当局までが捜査に乗り出しているという。
また今回は、こうした事件で必ず関与が明らかになる汚職保安員(警察官)だけでなく、より広範な人々が関わっていたことがわかっており、今後も引き続き当局の捜査が続くものと見られるというのが情報筋の話だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面薬物の密造・密売に対する北朝鮮当局の厳しい姿勢は、今に始まったことではない。専門の摘発グループも活動しており、国民のそれを良く知っている。にもかかわらず、多くの人々が薬物ビジネスに手を染め続けている。
情報筋は、「上層部は『薬物ビジネスを行う者は銃殺もあり得る』との布告を継続的に出し、庶民を脅かしているが、貧しさに苦しむ人々はこの商売から抜け出せないのだ。(経済制裁などにより)国営工場などの生産工程も止まり、農業も条件が良くない中で、どうにか現状から脱しようともがいているのが実情」だと話した。
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だとすれば、北朝鮮における違法薬物の密造や密売は今後もなくならず、当局による公開処刑も続くことになる。金正恩体制による核開発の強行は今のところ、朝鮮半島での戦争勃発にはつながっていない。それでも北朝鮮国内ではすでに、銃声が鳴り始めているということだ。
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