軍隊内の「性の乱れ」に悩みを深める金正恩氏

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朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は今月8日で創立71周年を迎えた。米国との非核化対話の流れを反映してか、軍事パレードなどは行われず、金正恩党委員長が人民武力省(日本の防衛省に相当)を訪問して演説するなど地味な行事だけで終わった。

ただ、はた目には地味に見えても、演説の中身はなかなか意味深なものだった。北朝鮮の軍は近年、物資の横流しや性的虐待が横行するなど、規律が乱れきっている。

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そのような実情に対する金正恩氏の「悩み」が、演説に表れた形となったのだ。同氏は演説で、次のように述べた。

「人民軍の党組織と政治機関で、思想と道徳は何とも替えられない革命軍隊の絶対的優越性であり、必勝不敗の保証であることを銘記し、政治・思想強兵化、道徳強兵化を二つの柱として思想活動を攻勢的に、多角的に、立体的に展開していくことによって、全軍を党と血脈が通じて思想と志、運命を共にする思想的純潔体、運命共同体にしなければならない」

北朝鮮の最高指導者が、軍に対して「政治」と「思想」の重要さを強調するのはいつものことだ。朝鮮人民軍は「党の軍隊」であり、党の政治思想に従うのは原理原則である。

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気になるのは、それらの言葉に「道徳」が続いていることだ。道徳の大切さが改めて強調されるのは、現状においてそれが、軍内で蔑ろにされていることを金正恩氏が認識しているからだろう。

しかし、特に女性兵士に対する性的虐待の問題は、北朝鮮の権力構造や女性蔑視、男性本意の風潮と複雑に絡み合っている。金正恩氏が演説で遠巻きに指摘したくらいでは、抜本的な改善がなされるとも思えない。

一方、金正恩氏は同じ演説で核兵器には言及せず、「人民軍の最精鋭化は革命武力の建設においてわが党の一貫した方針である」と表明。「思想革命、訓練革命、武装装備の現代化、軍紀確立に朝鮮革命武力の最精鋭化をさらに早める根本秘訣がある」と強調した。

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軍事力の維持・強化の方針に言及した言葉だが、実に曖昧な表現である。果たして金正恩氏は、仮に本当に非核化を行うとして、その後の軍事政策をどのように考えているのか。

それが見えてこないことがむしろ、同氏の非核化への意思を疑わせる要素にもなっているかもしれない。