北朝鮮で昨年、人民保安省(警察)の要員に対する殺人事件が増加していると、韓国のリバティ・コリア・ポスト(LKP)が伝えている。無実の罪を着せられ、刑務所での服役を余儀なくされた人々の報復と見られるという。
北朝鮮の保安員は取り締まりの権限を振りかざし、庶民からワイロを搾り取ることを生業としている。要求に応じなければ様々な言いがかりをつけて逮捕し、刑務所送りにすることもある。また、同様のやり方で女性に性行為を強要することもあり、悪徳保安員に対する庶民の恨みは深い。
(参考記事:手錠をはめた女性の口にボロ布を詰め…金正恩「拷問部隊」の鬼畜行為)国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が昨年10月31日に発表した報告書「理由もなく夜に涙が出る 北朝鮮での性暴力の実情」は、金正恩党委員長が政権を継承した2011年以降に脱北した54人と、脱北した北朝鮮の元公務員8人を対象にしたインタビューを元に作成されたものだ。
その中には、被害女性らの血のにじむような証言のほか、身近で起きた性犯罪の経過を知る第三者の証言などが数多く収められており、読むほどに「そこまで酷いのか」と愕然とさせられる。その中には、警察官が加害者となった性犯罪の事例が多数、収められている。
(参考記事:「私たちは性的なおもちゃ」被害女性たちの血のにじむ証言を読む)咸鏡北道(ハムギョンブクト)の消息筋がLKPに語ったところによれば、昨年末までの1年間で、全国の保安員に対する殺人事件は70件を超え、「報復殺人を恐れる保安員は1人で人通りの少ない道を通るのを避け、夜遅くに1人で出歩くことも避けている」という。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面消息筋はまた、「この統計はあくまで保安員本人が犠牲になった事件に関するもの。保安員の家族が狙われたケースを含めれば、数字はいっそう大きくなる」と指摘。「以前、濡れ衣を着せられた人々による報復は、死んだ保安員の墓を暴くというやり方が多かった。しかし最近は、保安員の家族を手にかける血なまぐさい報復が横行している」と述べている。
(関連記事:妻子まで惨殺の悲劇も…北朝鮮で警察官への「報復」相次ぐ)保安員の家族が犠牲になるケースは以前からあったが、最近になって、その傾向が強まっているということのようだ。
また保安員以外にも、秘密警察である保衛員や検察官など、同様の方法で庶民を搾取している司法関係者はたくさんいる。彼らもまた、保安員と同様に報復の対象になっていると見るべきかもしれない。
(参考記事:北朝鮮女性、性的被害の生々しい証言「ひと月に5~6回も襲われた」)