今年に入って3回開かれた北朝鮮の金正恩党委員長と中国の習近平国家主席の首脳会談。それをきっかけに中国では北朝鮮観光ブームが起きている。国境では、北朝鮮に向かう観光客が長蛇の列を成している。
デイリーNKの対北朝鮮情報筋によると、中国の丹東から北朝鮮の新義州に向かう観光客の数はざっと見て1日1000人ほど。入管には午前9時から列ができ始め、3時間ほどしてようやく解消するほど観光客が多い。
この情報筋は、北朝鮮観光ブームが始まったのは今年8月頃と見ている。一方、米国の北朝鮮ニュース専門サイトのNKニュースは6月としている。いずれも、3回目の中朝首脳会談の後だ。中朝関係改善の兆しが見えたことで、北朝鮮旅行への関心がぐっと高まったという。
(参考記事:実は近くて普通に行ける、北朝鮮旅行)北朝鮮は、国際社会の制裁に抵触しない手頃な外貨稼ぎの手段として観光業に力を入れてきた。観光客誘致の最大のターゲットとなっているのが、国境を接する中国だ。
核実験を繰り返す北朝鮮に業を煮やした中国は昨年までに、北朝鮮ツアー大手と言われる丹東中国国際旅行社の総経理を逮捕し、各旅行会社に北朝鮮ツアーの取り扱い中止を指示するなど、非公式の独自制裁を行っていた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面しかし今や、丹東中国国際旅行社も北朝鮮ツアーの取り扱いを再開。新義州日帰りツアーを790元(約1万2800円)、平壌、開城、妙香山、元山、金剛山を巡る5日間ツアーを3400元(約5万5000円)で販売している。丹東発のウラジオストク3日間のツアーが1000元(約1万6200円)、日本やタイの6日間ツアーが2000元台(約3万2400円)であることを考えるとかなり割高だ。
北朝鮮ツアーは丹東発のみならず、北朝鮮との国境に面した吉林省の集安、長白、図們発のものも存在する。最も安い図們から咸鏡北道(ハムギョンブクト)の南陽(ナミャン)を訪れる半日ツアーは、参加費用288元(約4700円)だ。
北朝鮮当局はさらなる観光客の誘致のために、江原道(カンウォンド)に観光リゾート「元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区」の建設を進めているが、無理な工事のせいで多数の労災死亡事故が起きていると伝えられている。