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北朝鮮の金正恩党委員長は、外国人との売買春を根絶せよとの方針を下したと言われている。実際、売春の斡旋などの罪で処刑される人もいる。

(参考記事:女子大生売春に悩む金正恩氏

しかし、貧富の格差拡大で増大する貧困層の中には、売春でもしなければ生きていけない人も多い。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

北朝鮮の北東部、羅先(ラソン)経済特区は、ビジネスや観光で多くの中国人が訪れる地域だ。一時は減っていた中国人だが、中朝関係の改善ともに再び増えつつある。北朝鮮当局は、そんな彼らを罠にハメて巨額の罰金をむしり取っている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

出張で羅先を頻繁に訪れるという中国・延吉在住の朝鮮族のビジネスマンによると、羅先では買春を行ったとの理由で摘発される中国人が増えている。少なくとも1ヶ月に数人が摘発されており、罰金1万ドル(約112万円)を払ってようやく釈放されるとのことだ。

(参考記事:【動画:単独入手】 北朝鮮で「生計型売春」が増加

一方でビジネスマンは「当局が急に取り締まりを始めた。どうも釈然としない」として、その理由を次のように語った。

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「中国人を対象にした売春は、北朝鮮の貿易業者が知り合いのレストランのオーナーを通じて密かに斡旋する形で行われているが、保安員(警察官)は場所と時間を知って取り締まりにやってくる。どうやら情報が漏れているようだ」(情報筋)

売買春の摘発は現行犯であることが原則となっていることを考えると、最初から保安員、貿易業者、レストランのオーナーがグルになってやっている可能性があるとビジネスマンは指摘した。

これについて別の中国のビジネスマンも、「羅先で事業を行う中国人は、1万ドルの罰金なら何とか用意できるほど経済的に余裕がある」として、一般の観光客ではなく最初からビジネスマンをターゲットにしたおとり捜査の可能性があると指摘した。

(参考記事:「夫が軍隊で酷い目に」…北朝鮮「巨大風俗街」で聞かれる悲しい話

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「以前にも北朝鮮当局が、気に食わない外国人ビジネスマンを売買春をネタに罠に陥れ、国外退去に追い込んだケースが何度もあった。そのときは罰金はなく、国外追放と再入国禁止で済まされていた。しかし、最近のケースは罰金をむしり取るための取り締まりだという印象が強い」(情報筋)

北朝鮮当局は以前から、現地を訪れる中国人から交通違反、違法な携帯電話通話などを理由に罰金をむしり取り、外貨稼ぎを行ってきた。

(参考記事:北朝鮮秘密警察が中国人の携帯の着信履歴を確認するワケ

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記