米ホワイトハウスは29日、「トランプ大統領は(北朝鮮の)金正恩国務委員長(朝鮮労働党委員長)と非常に良く、温かい関係にあると信じている」としながらも、同時に、トランプ氏の決断で米韓軍事演習を再開すればいつになく大規模になる、とする声明を発表した。それでいながらこの声明は、「現時点で韓米合同軍事演習に大金を使う理由がない」との立場を明らかにしている。
これに日韓のメディアは、それぞれ異なる角度から報じた。例えばフジテレビは「『軍事演習” target=”_blank”>再開なら大規模』トランプ氏がけん制」とのタイトルを付け、韓国の聯合ニュース(日本語WEB版)の見出しは「トランプ氏『韓米軍事演習に大金使う理由なし』」という具合だ。対北朝鮮で米国に何を期待するか、それぞれの「国情」が如実に反映された現象と言える。
実際のところ、米朝関係はいまどうなっているのだろうか。停滞しているのは間違いないが、昨年までとは比較にならないくらい良好な状態を保っていると筆者は考える。
今週に予定されていたポンペオ国務長官の訪朝をトランプ大統領がキャンセルしたのは、北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長名義で送られた書簡の内容が「好戦的だったから」だとされている。
振り返れば、これと同じ展開が以前にもあった。トランプ氏は5月24日、金正恩氏に宛てて米朝首脳会談を中止する旨を通告する書簡を送った。北朝鮮が金桂冠(キム・ゲグァン)第1外務次官と崔善姫(チェ・ソニ)外務次官の名義で、米国を脅したり激しく非難したりする談話を公に発表したことに対するものだった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面金正恩氏は、これに激しく動揺。
(参考記事:金正恩氏「外交のやり方変えろ」と部下を叱責…米朝会談「中止」巡り)それまでの経緯からすれば「支離滅裂」とも言える談話を改めて発表し、どうにか首脳会談の実現に漕ぎつけたのである。
(参考記事:会談中止で言ってることが支離滅裂…金正恩氏のメンタルは大丈夫か)今回の金英哲氏の書簡が、どの程度「好戦的」であったかは、内容が明らかにされていないのでわからない。しかし、ホワイトハウスが今回のような声明を発表できる程度には、自制的なものだったのだろう。ちなみに、北朝鮮の内閣などの機関紙・民主朝鮮は29日、「米国は対話相手である我々を尊重していない」とする個人名の論評を掲載している。書簡の細かい表現は別として、基本的な内容はこの論評と同じだったのではないか。
(参考記事:「米国は対話相手を尊重せよ」北朝鮮メディア)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
このような経緯を振り返ってみると、米朝対話は曲折を経ながらも、少しずつ「正常軌道」に乗ってきているようにも見える。少なくとも現時点では、大幅な揺り戻しに直面しているわけではないのではないか。
これはある意味で、金正恩氏がトランプ氏(とその側近たち)のリードを受けながら、北朝鮮外交の手綱さばきを少しずつ上達させている過程にも見える。