「外国人とメッタ打ち大乱闘」動画も…北朝鮮労働者の悲惨な環境

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海外に派遣されている北朝鮮労働者たちが、劣悪な労働環境、長時間労働、賃金の遅配や未払いなどに苦しめられている。米国務省によると、海外に派遣されている北朝鮮労働者は5万人から8万人とのことだが、劣悪な境遇に不満の声が出ている。

米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、つい最近までロシアに派遣され、建設労働者として働いた男性の証言を伝えている。男性がVOAに語ったところによると、労働環境は相変わらず改善されていないという。

ロシアの北朝鮮労働者といえば、3月にはタジキスタン労働者の集団と乱闘騒ぎを繰り広げている。両者は石やシャベルのようなものを手に相手をメッタ打ちにし、双方入り乱れて大暴れ。多くの負傷者を出した。その様子は、動画にも収められている。

(参考記事:【動画】北朝鮮労働者とタジキスタン労働者、ロシアで大乱闘

ロシアでは、過去にも乱闘事件が起きているが、その背景に労働者たちが多大なストレスを募らせていることがある。ロシアの建設現場は、とりわけ労働環境が劣悪なことで知られているからだ。

2016年には、現場から逃れようとした労働者が、監視役として派遣されていた国家安全保衛部員(秘密警察)に捕まり、見せしめのためひどい暴行を受けた。

(参考記事:アキレス腱切断、掘削機で足を潰す…北朝鮮労働者に加えられる残虐行為

アイドル並みの美女

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先述の北朝鮮労働者はVOAに対し、「幹部たちはみんな腐りきった。一日も早く(金正恩政権が)倒れることを望む。金正恩政権が祖国に存在する限り、変化を期待できない」とまで語る。

米国務省は6月28日、世界各国の人身売買の実態をまとめた2018年版年次報告書を発表した。訪朝して金正恩党委員長とも会談したマイク・ポンペオ国務長官でさえ、北朝鮮当局による海外派遣労働の実態について「悲劇」と懸念を示したほどだ。

北朝鮮が労働者を海外へ派遣する目的は、外貨稼ぎである。とりわけ海外で展開する北朝鮮レストランは、核開発を巡って国際社会の経済制裁が強められるまで、外貨稼ぎの柱のひとつだった。ときにアイドル並みの容姿を誇る美人ウェイトレスも配置され、日本人や韓国人の間でも人気だった。

(参考記事:美貌の北朝鮮ウェイトレス、ネットで人気爆発

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2018年に入り、南北関係と中朝関係は大幅に改善した。米朝間でも対話が続いている。こうした状況下で北朝鮮当局は、閉鎖された北朝鮮レストランの再開や、ロシアや中国をはじめ海外への人材派遣ビジネスの展開を目論んでいるだろう。しかし、金正恩体勢の派遣ビジネスの裏で、深刻な人権侵害が常態化していることを忘れてはならない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記