北朝鮮の「粛清された党幹部」が生還か

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北朝鮮の金正恩党委員長は16日0時、父である故金正日総書記の生誕記念日に際して、平壌の錦繍山(クムスサン)太陽宮殿を参拝した。参拝には朝鮮労働党の幹部らが同行しており、朝鮮中央通信は9人の副委員長の名前を紹介している。

朝鮮中央テレビは同日、この際の写真を公開しているのだが、上述した報道で名前が挙げられなかった「その他大勢」の幹部たちの中に、気になる顔が見える。金正恩氏の最側近のひとりとして朝鮮人民軍総政治局長の地位にあったが、最近になって粛清(あるいは失脚)説の伝えられている黄炳瑞氏と見られる人物が写っているのだ。

韓国情報機関・国家情報院は、朝鮮労働党組織指導部の主導で軍総政治局の検閲が実施された結果、黄炳瑞氏が解任され、思想教育を受けているとの見方を示している。

周知のとおり、金正恩氏は何人もの幹部たちを、人体をミンチにするような非常に残忍な方法で粛清してきた。

だがその一方で、北朝鮮では最高幹部が一時的に権力から遠ざけられ、「革命化」と呼ばれる再教育を受けた後で復活した例も数多くある。たとえば2016年5月には、同年2月初めに公の場から姿を消し、粛清、または処刑されたと見られていた李永吉(リ・ヨンギル)前朝鮮人民軍総参謀長が復活している。

(参考記事:北朝鮮軍「処刑幹部」連行の生々しい場面

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黄炳瑞氏はいずれ復活するのではないか、ということはかねてから言われていたが、その時期は意外と早いのかもしれない。

そうなった場合に気になるのは、党組織指導部長として軍総政治局の検閲を主導したとされる崔龍海(チェ・リョンヘ)氏との関係がどうなるかだ。崔氏は何かと評判の悪い人物で、黄炳瑞氏との不仲を指摘する情報もある。

金正恩氏の側近人事で、新たな異変が起きる日も遠くないかもしれない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

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