「入党させてやる」北朝鮮の性犯罪者がささやく悪魔の誘い

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国連女性差別撤廃委員会(CERAW)は20日、北朝鮮で女性たちの人権が著しく侵害されているとする報告書を発表した。

北朝鮮は表向きは男女平等を謳っているが、報告書は女性に対する人権侵害が常態化していることを指摘する。

軍隊内で性的暴行

CERAWは、北朝鮮の女性は教育や雇用機会を奪われており、ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)や職場で性的暴行の被害に遭っていると報告した。

北朝鮮社会で女性の人権が侵害される大きな理由として、社会全体で旧態依然とした男尊女卑が根深いことがある。それに加え、普遍的な人権という概念が浸透していないことが背景にある。

例えば、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)では、上官が部下の女性を「入党させてやる」と誘い出し、性的関係を迫る行為が横行しているという。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

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ここで問題は、仮に被害を受けたとしても、人権という概念が浸透していないため、女性達が「自分は人権を侵害された」という認識すらないことだ。ある脱北女性は韓国に来てから、はじめて自らの人権が侵害されていたことを知った。

ちなみに北朝鮮は、朝鮮民主主義人民共和国が成立する以前の1946年7月に男女平等権についての法令を制定。当時としては非常に先進的な法令だったが、高尚な理想とは裏腹に、北朝鮮女性の地位は低い。それどころか、報告書が指摘するように、今ある法律すら守られず女性は様々な暴力にさらされ続けているのだ。

CERAWの報告書は、北朝鮮の女性が何らかの事情で脱北し、再度帰国した女性が性的暴行や虐待を受けていることにも懸念を表明した。

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中国にいる脱北者のなかには北朝鮮を離れたものの、韓国にも第三国にも行けず、中国国内に潜伏する人もかなり多いと見られる。そして、そうした女性が、ブローカーに監禁され性的搾取を受けたり、人身売買の被害に遭うケースが後を絶たない。女性達が仮になんらかの事情で北朝鮮に戻ったとしても、またもや人権を侵害されるという救いのない境遇に置かれている。

今回、CERAWが発表した北朝鮮女性の人権侵害状況は、氷山の一角だろう。今後も継続して北朝鮮女性が受けている人権侵害の実態を調査し、この問題を隠蔽している金正恩体制を追及していかなければならない。

同じ事は中国政府にも言える。中国政府は、脱北して中国に潜伏する北朝鮮女性が受けている人権侵害を放置し、間接的に金正恩体制の人権侵害に荷担している。

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国際社会は、金正恩体制と中国政府に対して、北朝鮮女性が過酷な人権侵害を受けている状況が改善されるよう働きかけるべきだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記