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市場経済の発展により、増加の一途をたどる北朝鮮のトンジュ(金主、新興富裕層)。彼らの貯めこんだ「外貨タンス預金」を狙って、当局は様々なレジャー施設や高級レストランなど、カネを使わせる施設を建設している。皆平等に貧しい「贅沢は敵だ」の時代は終わりを告げ「贅沢は素敵だ」の時代が幕を開けつつある。

その一方、最も豊かな平壌ですら、庶民は苦しい生活を余儀なくされていると、平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

幹部や外国人が多い平壌市内には、光復通りの体育村に位置する「アヒル肉専門食堂」、「金カップ食堂」、「青春館」、市内中心部にある「高麗ホテル」をはじめ、多種多様な高級レストランが存在する。そのなかでも、今最も人気を呼んでいるのが「アヒルの燻製」だ。

食材は、いずれも平壌市内の西浦(ソポ)区域、平安南道(ピョンアンナムド)の平原(ピョンウォン)郡、甑山(チュンサン)郡、順川(スンチョン)市の龍池里(リョンジリ)にある「アヒル牧場」で育てられた高級アヒル肉を使っている。

平壌の一流シェフが、燻製にしたアヒルの首、頭、足などを栄養が損なわれないようにカラッと揚げる。味も一流だが、値段も張る。安くても15ドル(約1800円)、高いものは50ドル(約6100円)だ。

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高級レストランでのご予算は、1人あたり少なくとも50ドル。4人家族なら200ドル(約2万4000円)と、コメ320キロが買える額に相当する。市場で売られている1杯500~6000北朝鮮ウォン(約7.5~90円)の麺類で舌鼓を打つ庶民からすると、気の遠くなるような値段だ。

ちなみに、国営アヒル牧場では、労働党の畜産計画に応じて、平壌市内の高級レストランにアヒル肉を国定価格で卸さなければならない。しかし、大赤字になり牧場運営に支障が出たことから、トンジュの経営するレストランに市場価格で卸して、運営資金を稼いでいるとのことだ。

そんな高級レストランに、続々とやって来るのは、やはりトンジュや幹部たちだ。

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市場経済の発展により、経済全体がボトムアップしつつあるのは確かだ。その一方で、貧富の格差は、それ以上に広がっている。そして、市場の利権を独占している幹部や、彼らと結託してビジネスを行うトンジュは大儲けしているのが北朝鮮経済の一面だ。

高級アヒルを楽しむ幹部やトンジュに対して、一般庶民のごちそうは「フライドダック」だ。

一般の食堂や道端で売られており、1羽で5ドル、4万3000北朝鮮ウォン(約610円)ほどだ。コメ8キロ分にあたる結構なお値段だが、ささやかな楽しみとなっている。

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アヒル料理一つをとっても、北朝鮮の経済格差が見えてくる。こうした格差を称して「病んだ社会、貧富の王国」と、揶揄する声もある。

北朝鮮では、厳しい冬を迎えようとしている。毎年、この時期になると練炭すらまともに買えず、寒さに震える庶民が大勢いる。凍死する住民も絶えない。こうした北朝鮮の現実を忘れてはならない。