最近、脱北者の家族や彼らと関連のある住民が国境地域に移動するため「出張(旅行)証明書」の発給を受けると、北朝鮮保衛当局が該当住民が移動する場所まで尾行しているという。消息筋によると、韓国にいる家族から受け取る現金の一部を「恫喝」するためだとされる。

北朝鮮両江道の消息筋は23日、デイリーNKとの通話で「最近(咸鏡北道)穏城の40代の女性が、韓国にいる家族からの送金を受け取るため(両江道)恵山に行ったが、穏城保衛部が尾行していたことに気づかないまま(韓国から)送金された金を現場で全て押収された。保衛部に出向き調査を受けるよう指示するだけで、現行犯逮捕せず保衛部員は退却したという。今年初め、刑法60条が改正され『韓国からの送金作業』も処罰対象となったが、保衛部が全額を押収したため処罰はないだろう」と説明した。

北朝鮮への送金方式は脱北者が「北朝鮮のブローカー」経由で家族と連絡をとった後、家族であることを確認し送金する。脱北者は北朝鮮にいる家族に送金する場合、韓国ブローカー→中国ブローカー→北朝鮮ブローカーの3段階を経るのが一般的。

北朝鮮への送金を担当するブローカーは、該当金額の10%を手数料として差し引く。脱北者が100万ウォン(韓国ウォン)を送金する場合、韓・中・北の3段階を経る間に手数料30%が差し引かれ、北朝鮮の家族は70万ウォンを受け取ることになる。しかし現実はこれより少ない額を受け取る場合が多い。

消息筋は「今回送金作業中に韓国からの送金額を全て奪われた住民は、穏城で出張証明書の発給を受け恵山に来たが、監視がついていたことを知らなかったようだ。何の疑いもなく送金作業を行う家に行き、金を受け取る最中に摘発された」と当時の状況を説明した。

北朝鮮では他地域に移動するためには「出張証明書」の発給を受けなければならない。同証明書は人民保安部傘下「2部」で発給され、受取りまでに通常一か月程度かかる。

消息筋はさらに「国境統制があまりにも厳しいため、あちら(韓国)に逃げる人(脱北者)が少ない。そのため送金作業まで監視し現金を奪おうとしている。住民は『送金も昨年のように頻繁に行えないのに、これすらも奪われた人の心中は計り知れない』と心を痛めている」と伝えた。

金を奪われた住民は保衛部員に「中国にいる親戚が送った金」と弁解するが、保衛部員は聞く耳を持たないという。むしろ「黒い金(韓国国家情報院の金)を受け取っても無事だと思うのか」と脅迫しているという。

国境地域の保衛員、保安員らはこれまで、住民の脱北と密輸業者の脱北援助などで賄賂を受け取ってきたが、最近の国境統制強化により脱北する住民が減り、賄賂収入が減るや送金作業まで取り締まりに乗り出したものと思われる。

このような保衛員、保安員の行動に対し住民の不満が高いと消息筋は話す。一部の住民は「あのようなもの(保衛員、保安員を卑下した表現)が刑法に真っ先に引っかかり事情聴取を受けるべき。送金された金を受け取ったり援助した人間を処罰すると言ったが、なぜ我々ばかり苦しめるのか理解できない」と不満を吐き出しているという。

消息筋によると、韓国に定着した脱北者が北朝鮮の家族に送金するケースは昨年に比べ減少したという。そのため国境地域の保衛員、保安員が「送金ライン」を確保しようと水面下で神経戦を展開している。

社団法人の北朝鮮人権情報センターが2012年、韓国に住む15歳以上の脱北者400人余りと面談調査を実施した結果、調査対象者の約半分に相当する49.5%が北朝鮮の家族に送金したことがあると答えた。年間の個人別送金総額は51?100万ウォンが全体回答者の31.7%と最も多く、続いて101?200万ウォンが16.7%、500万ウォン以上が12.5%だった。

一部の脱北者は「(北朝鮮の)家族にすでに1、2回に分けて送金したため、毎年送金するのは事実上無理がある。家族が金を頻繁に要求してくるため、電話番号を変えてしまう脱北者も少なくない」と話した。