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2003年に国内に入国した医師出身の脱北者、チェ・スンチョル氏は、最近、人生の第2幕を歩み始めた。彼は医者という職業から転向し、海外投資コンサルタントという、韓国人もあまり聞きなれない仕事をしている。

チェ氏は咸北清津医大を1999年に卒業して、北朝鮮で2年余りの間、消火器内科医師として働いたエリート出身だ。

先月、チェ氏は為替の仲介会社を設立して、海外投資をしようとする国内の投資家たちに対する相談と、為替の仲介関連の仕事をしている。彼は投資者相談という専門職種に携わり、知人たちからも能力を認められているが、脱北者出身ということは明らかにしない。

チェ氏は”韓国に定着して、脱北者に対する社会的な偏見をひしひしと感じたから”と語った。海外投資関連の仕事は信頼だけでなく、社会的イメージが重要であるため、脱北者出身という事実が知られることを一層はばかる。.

しかし彼は最近注目を浴びて、放送を通じて自身について知られ、身分を隠すことができないほどの有名人になってしまった。

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先月29日、インターネットで外貨預金口座を問い合わせた瞬間、信じられない事件が起った。25ドルに過ぎなかった残高が1000万ドル(約91億7000万ウォン)に増えていたのである。

“1000万ドルが口座に入金、映画のような現実”

呼吸を整えて何度も数字を数えて見たが、1000万ドルが間違いなく入っていた。彼は預金が実際に存在するのか確認するために、10万ドルを他の銀行口座に送金した。

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口座振込みが完了した。

チェ氏は1時間前に、ウルサンにいる知人が、1万ドルを送金したことを思い出した。一昨日、知人が送った1万ドルが、銀行システムのトラブルか職員の手違いで1000万ドルになって振り込まれたということに気付いた。

彼はしばらく欲心が生じもしたが、むしろより大きな重荷になる可能性があると思い、じっと電話を待った。しばらくして、送金した銀行から電話がかかってきた。

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こうして、30分余りの間に、彼の通帳には1000万ドルが入って来て、再び静かに消えた。この映画のような現実は、彼が自分のブログに関連する内容を掲載したため、世に知られることになった。

18日、チェ氏の事務所を訪問し、思いがけない一攫千金を返した所感と、人生について話を聞いた。

“1000万ドル、それ以上を手に入れたかのように気持ちがよかった”

インタビューの間、各放送社や新聞社などから電話がひっきりなしにかかってきた。不本意ながら、一躍有名人になったのだ。チェ氏のブログには50万人以上が訪問し、数千人の書き込みがあった。

“本当は大したことではないと思うのに、ブログに数叙恊lのネチズンたちが入って来て、激励のメッセージを残してくれ、一躍スターになったようで頭がぼんやりとしている”とチェ氏は述べ、“少しの間だけでも、1000万ドルを持って喜び、よいことをしたということに意味があると思う”と語った。

彼は“正直に言って、欲心が生じたのも事実だ。銀行の仕事をしている友達に電話をしてみるかとも考えた”と言いながらも、“私のお金でないことは間違いないため、良心が許さなかった”と付け加えた。

更に、“生きていたら思いがけないこともあるなと、笑ってすませて、事業が栄える徴兆と考えたい”と述べ、“1000万ドルというお金をわずかな間でも持ててよし、何よりも善行をして、1000万ドル以上のものを手に入れたように気持ちがよい”と語った。

チェ氏は特に、“脱北者という私の出身も気になったのは事実”と言い、“脱北者は社会の下流層という社会的偏見があるが、脱北者の中にも、こんなことをする人もいるということを伝えたかった”と語った。

インタビューの始終、チェ氏は自分が行った善行に対して、‘大したことではない’と言い続けたが、脱北者たちに対する社会的偏見については断固とした口調で、’もう変えなければならない時’と強調した。彼は社会のあちこちで、自分の仕事を専門として熱心に生きている脱北者が沢山いると語った。

“脱北者が社会の認識を変えねば”

“脱北者に対する否定的な認識を変えるためには、脱北者の中にスターがたくさん出なければならない。脱北者が韓国社会で下流階層であると認識されるから、スター脱北者たちが出て、韓国の人たちと肩を並べなければならない。国内の脱北者を助けることができる能力と、韓国社会の発展に寄与することができる力量を高めなければならない”と訴えた。

チェ氏は脱北者に対する苦言も忘れなかった。

“脱北者は成功しようとする欲心のために、成功しにくい。北朝鮮で成功した人は韓国でも成功する。これは社会適応力に差があるからだ。脱北者の中には、不平不満だけ並べる受け身の人がいる。自ら適応して行こうとする努力が必要だ。特に、欲心を捨ててよいことができる自分だけの‘コンセプト’を捜さなければならない。その‘コンセプト’に向かって努力してこそ、成功できる”

更に、“ハナ院での教育と脱北者定着支援プログラムに不足している部分が多い”と指摘し、“脱北者の社会適応能力を高めることができる教育プログラムを開発しなければならない”と語った。

彼は将来、事業が成功したら、脱北者たちに対する社会的認識を変えて、北朝鮮の人権問題などを伝える新聞を発行する計画だと明らかにした。2005年から去年までも、脱北者新聞、‘新しい町’を発刊していた。当時、2年余りの間、38の地域と政府の部処に新聞を配布したが、財政的な問題で、新聞の発行を中断した。

だがチェ氏は、脱北者について知らせることができる新聞を通じて、脱北者の社会統合を助けなければならないと言う。今後、可能になり次第、引き続き製作すると語った。

“2002年に中国で生活しながら悟るようになった、北朝鮮の金正日政権の問題を、韓国社会に知らせなければならない。金正日体制で、真の自由を感じることができずに生きている北朝鮮の人民のためにも、新聞の発行を必ず再開する”と力をこめて語った。