ハッキリ言ってしまうならば、これは北朝鮮政府が、マレーシア国民を公然と拉致したも同様の事態と言えるのである。
今後いっそう問題が複雑化し、北朝鮮が強硬な姿勢を取り続ければ、マレーシアは国交断絶どころか、自国民を救出するための実力行使を検討するかもしれない。もし、マレーシア一国でそれが難しいとなれば、米国や韓国に対し加勢を求めることも考えられる。
国際常識を無視した北朝鮮の暴挙により、クアラルンプールで起きたひとつの殺人事件が、朝鮮半島の安定を揺るがす大問題に発展しかねないのである。
(参考記事:北朝鮮当局の金正男氏「遺体横取り」に泣く美人母娘)高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。