北朝鮮「核実験」の裏で進行するもう一つの恐怖

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北朝鮮による第5次核実験の衝撃がさめやらぬ中、韓国国防省は12日、北朝鮮が新たな実験に向けた準備を完了したと報じた。実験のスケジュールを予測するのは極めて困難だが、金正恩氏は核兵器の実戦配備に向けて、まっしぐらに突き進んでおり、遅かれ早かれ実験は行われるだろう。

北朝鮮が核兵器を実戦配備すれば、日米韓のみならず東アジアのみならず、しいては世界の脅威となることは疑いようがない。一方、核実験によって、北朝鮮の一部地域が深刻な「放射能汚染」に見舞われていることは見過ごされがちだ。

ウラン鉱山で被ばくの恐怖

韓国統一省は12日、北朝鮮の核実験場がある咸鏡北道(ハムギョンブクト)吉州(キルチュ)郡に住んでいた脱北者を対象に、核実験による人体への影響を調査する案を検討しているという。

きっかけは、同地出身の脱北者らが、様々な病気に苦しんでいるという韓国NGOの発表だが、この問題は今にはじまったことではない。

既に2013年の時点で、北朝鮮のウラン鉱山で働く労働者の平均寿命がその他の地域に比べ著しく短く、さらに、放射能汚染による奇形児の出産も多発していると内部情報筋が証言していた。

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統一省は、NGOの発表に対して「相当な信ぴょう性があると判断される。今後、追跡調査などの活動を行う」と述べている。

政治犯が強制被ばく労働

韓国在住の脱北者の被ばく問題はさておき、5回に及ぶ核実験によって、実験場周辺が放射能で汚染されていることは疑いようがない。汚染どころか、核施設では、政治犯が被ばく労働を強いられているという情報すらある。

日本からすれば、北朝鮮の放射能汚染は自業自得の関係のない話と思われがちだが、決して他人事ではない。過去には、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の許宗萬(ホ・ジョンマン)議長の次男らによって、放射性物質の影響を受けたマツタケが不正輸入されていた可能性があるのだ。

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北朝鮮は核実験をするたびに、「自衛的核抑止力」という言葉で、自分たちの正当性を訴える。しかし、蓋を開けてみれば、守るどころか金正恩氏の核の暴走の裏で、一般庶民が多大な負担を強いられている。それだけでなく、他国に「放射能汚染」という恐怖をまき散らしているのだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記