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“金正日は高所恐怖症?”

金正日が高所恐怖症のために飛行機に乗ることができないという話は、彼をめぐる代表的な俗説の一つだ。ユーラシア大陸を越えたモスクワ訪問の時も、飛行機の代わりに列車を利用したくらいだから、こうした噂が広まるのだろう。

金正日は1965年に金日成のインドネシア訪問に随行した当時、主席専用機を利用したことがある。同居していた越北映画俳優の成恵琳の最後の出演映画、‘ある自衛団員の運命’の撮影現場だった白頭山のふもとまで、ヘリコプター(直昇機)に乗って行ったというエピソードも伝わっている。北朝鮮の出版物にも、本人が航空機に搭乗する事例が数回記録されている。

しかしその後、40年以上の間、金正日が飛行機を利用して外国を訪問したという話は全く聞かれない。金正日は労働党中央委員会の秘書時代だった1983年6月から、2000年5月と2001年1月、2004年4月、そして最も最近の2006年1月まで、中国を訪問する時に特別専用列車を利用した。

中国のみならず、2001年7月26日から8月18日まで行ったロシア訪問と、2002年8月のロシア極東地域の訪問の際も、専用列車を利用した。平壌からモスクワまで往復2万キロを越す距離を、およそ24日かけて列車で移動した金正日の紀行に、国際社会は‘ギネスブック’に載りそうだと皮肉った。

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ロシア側は最初、ウラジミール・プーチン大統領の専用飛行機の提供を北側に打診したが、金正日が汽車旅行に固執して驚いたという裏話も伝わっている。

これだけでなく、金正日は1年に100回以上実施する現地指導の時、主に列車を利用すると言われている。金正日の度が外れた(?)列車愛は、何に起因しているのだろうか?

◆ 列車でモスクワ訪問…’ギネスブック’なみ = 北朝鮮の専門家たちがあげる第一の理由は、テロの脅威だ。飛行機テロは爆破装置が適時に作動しさえすれば、他の不意打ちテロよりも成功率が100%に近い。

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金正日は本人が直接飛行機テロを指揮した経験があり、飛行機テロの恐るべき威力をよく分かっている。1987年の大韓航空858便のボーイング707爆破事件が代表的だ。当時検挙された北朝鮮の工作員金賢姫は、金正日の親筆の工作指令を受けて実行した犯行だったと自供した。

それ以外にも、1970年半ばに北朝鮮で発生した飛行機墜落事故も、金正日の指示で行ったものであると推測されている。当時、平壌の順安飛行場を出発してパリに向かった朝鮮民間航空所属のソ連制旅客機が、離陸直後に墜落して爆発した事件が起こった。旅客機には文化芸術家100人余りが乗っていた。

彼らの多くが、それまで外国にあまり送らなかった‘南半部出身’であったため、金正日が同居の女性である映画俳優の成恵琳との関係を最後まで秘密にするために、テロを指示したのだという疑惑が出ている。当時、飛行機の操縦士が北朝鮮最高のベテラン操縦士であったキム・マノク(金日成の専用飛行機の責任操縦士)だったという点も、こうした疑惑を裏付けている。

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2番目は、アメリカと韓国などの敵対国に、自分のプライバシーを露出しないという意図のためであると思われる。また、列車は他の交通手段よりも安全性が保障される。鉄道周辺の徹底的な点検と警備、車両の安全だけ確保されれば、警護上の問題点を容易に解決することができる。

ある対北消息筋は、“北朝鮮がアメリカに対して感じる恐怖心は、私たちの想像を超える”と言い、“飛行機は列車に比べて位置の追跡が容易で、テロやミサイル攻撃に非常に弱いという点を大きく憂慮したのだと思われる”と明らかにした。

金正日の特別列車は爆弾に耐えることができる防爆装置がついていると知られている。2001年のロシア訪問の時は、電気機関車2台が導く先導汽車が特別列車よりも先に到着し、地雷の埋設の確認や事前の保安作業を徹底的に行うなど、徹頭徹尾の警護態勢で臨んだ。線路100メートルごとに警察 を1人ずつ配置し、これに投入された人だけでも9万3千人にのぼり、金正日の列車が停車する駅ごとに動員された警護要員を含めれば10万人にのぼるという。

特別列車が停車する駅には、臨時疎開令が下り、英文が分からないロシアの住民たちが不便な思いをした。ロシアの新聞、イズベスチアは、“空虚なプラットホームと凍りついた列車、そして無人の地峡にあわてた雀たち、警察の警備船など(8月)3日の夜、ヤロスラブスキー駅が見せた姿は(現代社会の)奇蹟で、まさに共産主義の亡霊”と当時の雰囲気を伝えた。

金正日は北朝鮮国内で列車で移動する時も、厳重に警備する。北朝鮮の護衛総局所属で、金正日の警護員出身である李英國氏は、“金委員長が旅行をする時、数台の自動車や汽車、船などが同時に動いて、移動方向を偽装する”と語った。

列車の場合、2時間間隔で先発列車、本列車、後発列車が順番に出発する。このうちどれが金正日が乗った列車なのか分からず、列車が移動する6〜8時間、線路周辺への接近は全て遮断される。

アメリカの北朝鮮専門家、マーカス・ノーランド氏は、“関連の調査によれば、飛行機事故で死亡する独裁者の数が異常に多いため、金正日が列車のみに固執するのも、よく考えてのことかも知れない”と言った。

◆ 人民の生活を感じるために列車で移動? = 北朝鮮ではこうした金正日の列車の利用さえ、偶像化の道具に使っている。カン・ソクジュ北朝鮮外務省第1副相は、‘金正日熱風’という本で、“(金正日は)人民の生活をより身近に感じるために列車に乗る”と主張した。

2002年に平壌を訪問して金正日にインタビューしたロシアの女性記者、オーラ・マリチェバ氏は、金正日に“どうして汽車で旅行をするのか”と質問した。すると金正日は、 “外信は私を‘高所恐怖症の患者’と描きたがる。しかし、飛行機に乗って行ったら私に何が分かるのですか?私は私の目で、ロシアの長短所を直接見たい”と答えたという。

それ以外にも金正日は、“飛行機に乗ったら、(ロシアの)外交官と政治家にしか会うことができないが、汽車旅行をすればあらゆる人に会えて一層よい”という言葉も残した。

しかし、人民の生活を視察するのに使われる金正日の特別列車は、北朝鮮の住民の一般列車とは違い、超豪華な施設を取り揃えた移動執務室だ。

列車は普通、ディーゼル機関車2両が前後に繋がれている形態で、国内旅行の時には8〜9両ほどに車両を編成して、外国巡回の時には20両ほどに編成するという。

金正日が乗る‘1号客車’には、1人用の寝室が5つあり、訪問地域の経済の現況などがすぐに分かる衛星電子地図(GPS)と、インターネットなどができる先端通信装備が設置されているという。これ以外にも、宴会室、会議室、警護隊の車両、専用自動車(ベンツ2台)のガレージなどが揃っている。

金正日のロシア訪問に随行した、コンスタンティン・フリコフスキー、ロシア極東地区大統領全権代表の著書、‘東方特別列車’によれば、列車の中には映画鑑賞のための大型スクリーンがあり、リビングルームにはカラオケが備えられていた。

列車の中にはフランス産のワインがあふれ、金正日はレッドワインを楽しんで飲んでいたという。金正日が一番好んで食べる、鮫のふかひれ料理も食卓に上がった。金正日が食べる料理の材料は、北朝鮮から直接飛行機で調逹し、ここから出たごみも密封して北朝鮮に送った。

一方、2004年に金正日が中国訪問を終えて帰って来る途中に発生した、ヨンチョン駅の爆発事故が、金正日暗殺の試みだったという説も流れている。空も地も恐ろしくなった金正日の選ぶ道は海以外にあるのだろうか? 次の外国訪問の時、金正日がどのような道を選ぶのか気になる。