だからこそ、国際社会からの批判や反発を顧みず、北朝鮮の治安機関は平気で人権を無視する。そして、住民を監視し、統治するために強権をふるっているのが日本の警察にあたる人民保安部、そして泣く子も黙る秘密警察「国家安全保衛部(保衛部)」だ。
国家安全保衛部は、いわばナチス・ドイツのゲシュタポのような存在だ。単なる治安機関の枠を越えて、金正恩式「恐怖政治」の実行部隊となり、張成沢氏を皮切りに、大物幹部を粛清・処刑に追いやった。記憶に新しいところでは、2016年の李永吉元総参謀長や、2015年の玄永哲人民武力部長(国防大臣にあたる)など、保衛部は粛清や処刑になんらかの形で関わったとみて間違いない。
(参考記事:玄永哲氏の銃殺で使用の「高射砲」、人体が跡形もなく吹き飛び…)(参考記事:北朝鮮軍「処刑幹部」連行の生々しい場面)
幹部のみならず、北朝鮮の全国民に対する保衛部の影響力は絶大で、法的手続きなしで逮捕でき、政治犯収容所に入れたり、死刑に処することができるなど強力な権限を持つ。まさに、北朝鮮における人権侵害の総本山であり、今もなお人権侵害を拡大再生産している。
(参考記事:赤ん坊は犬のエサに投げ込まれた…北朝鮮「人権侵害」の実態)(参考記事:スパイ容疑の芸術家を「機関銃で粉々に」…北朝鮮「人道に対する罪」の実態)
もちろん、党や軍の主な幹部やの粛清・処刑を最終決定しているのは、金正恩氏だ。