米国は2月に成立した対北制裁の強化法に、核・ミサイル開発につながる貴金属や黒鉛、アルミニウム、ソフトウエアを北朝鮮に販売したり供給したりする第三国の個人や団体なども制裁対象に含めることのできる、「セカンダリーボイコット」(第三者制裁)条項を盛り込んでいる。
つまり今回の2人の「武器商人」への制裁指定は、シリアとエジプトに対するけん制球にもなるわけだ。国連安保理ではこれまで、北朝鮮に対する制裁決議が繰り返し採択されてきたが、履行に積極的な国は必ずしも多くない。それどころか、世界情勢の不安定化とともに、北朝鮮製の武器に対する需要は伸びている可能性すらある。
(参考記事:北朝鮮の核兵器が「人気商品」になる可能性)新たな段階に入ったと思われる米国の北朝鮮制裁が、こうした現状を変えられるかどうか。今後の動向を注視したい。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。