北朝鮮で、最も困窮しているのは実は軍隊なのだ。 庶民経済が市場経済化した北朝鮮では、誰もが安月給の国営企業などの職場そっちのけで副業に励み、稼いだおカネで食べ物を買って生活している。配給などまったく当てにならない。 しかし、厳しい規律で縛られる軍隊で、まさか持ち場を放り出して商売に走るわけにはいかない。下手をすれば銃殺である。そんな切羽詰まった環境の中、軍の内部では兵士同士の殺人事件も発生。軍紀は乱れきっているのだ。
(参考記事:北朝鮮、軍内部で「殺し合い」…ミサイル発射の影で)そもそも、正恩氏は軍人らの最大の畏敬の対象となるべき戦闘指揮官を相次いで葬っており、それにはさすがに大きな不満がたまっていると言われる。 ハッキリ言ってしまうなら、朝鮮人民軍は正恩氏のせいで、確実に弱くなっているのだ。その現状は、150万人の若者に志願を強制したところで、変わるものではないのだ。
(参考記事:金正恩氏が「暴走」をやめられない本当の理由)高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。