復権した金正恩側近の極悪性スキャンダル

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昨年10月以後、動静が途絶え、粛清説が囁かれていた崔龍海(チェ・リョンヘ)氏が、復帰したと見られる。

北朝鮮メディアは、崔龍海氏が公式の場で演説したことを報道した。昨年末に交通事故で死亡した金養建(キム・ヤンゴン)書記の国家葬儀委員会のメンバーに、崔氏は名前を連ねていたことから復権との可能性が指摘されていたが、改めて確認された形だ。

崔龍海氏は、北朝鮮の支配階層のパルチザン出身者であり、故金日成主席の盟友でもあった崔賢(チェ・ヒョン)氏の息子という経歴から、動静が注目されがちだが、金正恩第1書記の取り巻きの一人に過ぎない。そればかりか、北朝鮮国内での評判はすこぶる悪い。

崔氏を知る人物によると、北朝鮮一のブランド好きで派手な生活を好むタイプとのこと。こうした人間性なのか、度重なる不正事件を引き起こし、1994年と2004年に革命化(思想教育)処分を受けた。それだけでなく、権力を盾にして美貌の芸能関係の女性を性の玩具にするなどのスキャンダラスな醜聞に濡れたことすらあるのだ。

(参考記事:美貌の女性の歯を抜いて…崔龍海の極悪性スキャンダル

また、金正恩体制に入ってからは、今回を含めると二度も動静が消えている。いずれも何らかの処分を受けたという見方が強いが、今回も復帰したことから実に浮き沈みの激しい政治家だ。反面、粛清の嵐が吹き荒れている北朝鮮のなかでは、実にしぶとい政治家ともいえるだろう。

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そんな崔氏は、金正恩氏の特使や代表団団長と中国や韓国へ送り込まれたが、目立った成果を収めたわけではない。結局のところ、先代から金日成一家に仕えたという「親の七光り」だけで、生き残っていくしかない。

変態性欲スキャンダルの醜聞に塗れた崔氏のような人物が、金正恩体制を支える象徴的な存在であること自体が、歪な北朝鮮独裁体制をよく象徴しているが、同時にこうしたスキャンダルを生み出すようなシステムが、北朝鮮にあることを指摘しておかなければならない。

北朝鮮には最高権力の私生活に深く関わる「5課処女」という、謎のセクションが存在する。一般的に「喜び組」と称される女性集団は、北朝鮮では「5課処女」といわれ、そのなかには、さらに最高指導層の「夜の生活」に携わる集団があることも暴露されている。

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そして、5課処女という制度を確立させたのは、崔氏の盟友であり金正恩氏の父親である故金正日氏だ。正日氏は、地方を現地指導した際に、美貌の女性に対してセクハラまがいの行為と甘い言葉で、5課の話をもちかけたことがあるほど、彼にとっても5課処女は、特別な意味を持っていたようだ。

金正日氏、崔龍海氏に限らず、北朝鮮権力者たちの乱れた性の実態については、過去と違い、北朝鮮内部からダイレクトに伝わるようになりつつあるが、そのなかには「ここまで乱れているのか」と思わせるようなエピソードもある。

今のところ、金正恩氏に関するスキャンダラスな話は伝わってこない。その一方で、指導層に関するスキャンダルは、今後もどんどん出てくるだろう。結局のところ、権力者が好き放題にできる独裁体制下で「5課処女」のような制度や習慣が存在する限り、第二第三の崔龍海氏は必ず現れる。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記