この間に、日本社会は相当に物分かりがよくなった。かつて就職差別が存在していたなど、私ですら信じ難くなっているほどだ。
それどころか、私と同世代の在日が当たり前のように有名企業に職を得ている。「医者か弁護士に……」との在日2世たちの教えは、当たっていなかったわけだ。彼らの多くは、就職につながらない学歴を放棄するなどしたために、世の変化を知るための情報にアクセスできなかったのだろう。
ともあれ、こうした日本社会の変化が、在日にとって好ましいものであるのは言うまでもない。
ただ、少し困ったこともある。かつての日本社会が現在とは違っていたのだという事実を、認識できていない日本人が少なくないということだ。
たとえば特別永住者という在留資格は、日本社会の在日に対する接し方が変化する過程で生まれたものだ。それ以前の時代はいまに比べ、在日にとって融通の利かないことが非常に多かった。そこに目を向けていないからこそ、在日が特別待遇を受けているかのような言説が出てきてしまうのだろう。
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