金正恩が「最も危険」と名指しした日本海…北朝鮮「核武装艦」が日本を意識する理由

北朝鮮が新型駆逐艦「姜健(カン・ゴン)」を日本海側に実戦配備した。金正恩朝鮮労働党総書記は就役式で、同艦が核兵器を運用する「国家核対応システム」に加わると明言。さらに日本海とその周辺を、北朝鮮が最も大きな軍事的脅威を受けている海域と位置づけた。

朝鮮中央通信によると、就役式は6日、東部の元山港で行われた。「姜健」は5000トン級の新型駆逐艦で、6月に西海(黄海)艦隊へ配備された1番艦「崔賢(チェ・ヒョン)」の同型艦。東海(日本海)艦隊に配属された。

金氏は演説で、「国家の安全は恒常的かつ直接の脅威を受けている」とした上で、「その中でも最も大きな脅威を受けているのは朝鮮東海とその近隣水域だ」と強調した。

さらに、敵対国の軍艦が周辺海域に恒常的に出没し、「核資産の移動と配備、合同戦争演習」を行っていると非難。「危険な影は一刻も早く消さなければならない」と述べた。

ここでいう「敵」は、直接対峙する韓国だけを指しているわけではない。米国の空母や原子力潜水艦などの戦略資産、韓国軍、そして日本の自衛隊を含む日米韓の軍事協力全体を念頭に置いたものとみられる。実際、「姜健」の就役発表と同じ7日には、日米韓による多領域共同訓練「フリーダム・エッジ」が始まった。

さらに踏み込めば、今回の演説で特に意識されている対象の一つが日本だと読むこともできる。

韓国と米軍は北朝鮮にとって南からも西からも脅威となる。一方、金氏があえて「最も大きな脅威」を受ける場所として名指しした日本海の向こう側には、日本列島がある。そこには海上自衛隊の戦力だけでなく、横須賀をはじめとする在日米軍の重要拠点も存在する。

北朝鮮が日本海を重視する姿勢は突然現れたものでもない。

1番艦「崔賢」は最終的に西海艦隊へ配備されたが、2025年4月の進水式では党中央軍事委員会の命令書が東海艦隊司令官に伝達されており、当初は東海への配備が予定されていたとみられる。

ところが今年6月の就役式では、一転して西海艦隊への配備が発表された。その際、金氏は「今の心配はこうした大型戦闘艦船を係留する基地がないことだ」と自ら認め、新たな海軍基地の建設を決定したことも明らかにしていた。日本海側とは明言しなかったものの、「崔賢」の配備先が東海から西海へ変更された経緯を考えれば、東海岸側の基地能力が不足していた可能性が浮かぶ。

そして今回、金氏は「姜健」の東海艦隊への配備とともに、「東海に海軍基地が建設されている」と明言した。

2番艦「姜健」は東海岸で建造されており、当初から日本海側に配備される予定だったと見るのが自然だ。こうした経緯をつなぎ合わせると、北朝鮮は当初、新型大型艦2隻をともに日本海側で運用する構想を描いていた可能性がある。

実際、金氏は今回、「姜健」と東海で建設中の海軍基地について、「敵に送る明白なシグナル」になると強調した。さらに「姜健」は「崔賢」と艦のレベルや兵器システムは同一であるにもかかわらず、その就役には「事実上比べられない意義」があるとまで述べている。その理由として続けて語られたのが、日本海をめぐる軍事的脅威だった。

そして金氏は、「最も重要な変化」として「海軍の核武装化」を挙げ、「姜健」についても「国家核対応システムに加わった一つの手段」と明言した。敵が武力を使用すれば「最も致命的な絶対の力」の使用を命じるとも警告した。

北朝鮮の新型駆逐艦は、もはや沿岸防衛だけを目的とする艦艇ではない。巡航ミサイルなどを搭載し、金氏自身が「事実上の攻撃型駆逐艦」と位置づける戦略兵器となりつつある。7月には「姜健」から戦略巡航ミサイルの発射試験も行われた。

金氏は演説で、海軍強化に向けた別の「重要な計画」を進めており、「8カ月後に改めて世界に実証する」とも予告した。

北朝鮮の海軍増強は、朝鮮半島だけを見ていては全体像を捉えにくくなっている。今回の「姜健」就役は、その視線が日本海のさらに向こう側へ向けられていることを示す動きと言えそうだ。(ジャーナリスト 金賢)