北朝鮮、「延坪島」型の局地戦を想定か “敗北体験”踏まえ兵器開発
北朝鮮が公表した新型155ミリ自走砲システムを巡り、「第二の延坪島砲撃戦」を念頭に置いた局地戦能力強化ではないかとの見方が、韓国の軍事専門家の間から出ている。朝鮮中央通信(KCNA)は8日、金正恩総書記が重要軍需工業企業所を視察し、「射程60キロ超」の大口径砲兵システムを高く評価したと報じた。そこには、2010年「延坪島砲撃戦」で露呈した弱点への反省がにじむ。
延坪島砲撃戦では、北朝鮮軍が黄海上の韓国領・延坪島に対し奇襲的に大規模砲撃を実施。韓国海兵隊員と民間人に死者が出るなど朝鮮半島情勢は一気に緊迫した。しかし軍事的には、北朝鮮側が敗北したとの分析が少なくない。北朝鮮は大量の砲弾を発射したものの、命中精度は低く、海面や無人地帯への着弾も少なくなかった。さらに発射位置が韓国軍の対砲兵レーダーに捕捉され、K9自走砲による反撃を受けた。固定化された海岸砲陣地への依存や、迅速な陣地転換能力の不足も浮き彫りとなり、死傷者数は北朝鮮側が上回ったとの指摘もある。
今回KCNAが新型砲システムについて「優れた機動性」「高い戦闘環境情報処理能力」「自動射撃システム」を強調した点は、こうした過去の教訓を意識したものと受け止められている。現代戦では発砲地点が無人機や対砲兵レーダーで即座に探知されるため、「撃ってすぐ移動する」能力が砲兵の生残性を左右する。ロシアによる侵攻が続くウクライナでも、長射程化と機動化、自動化が自走砲の重要な条件となっている。
(参考記事:【写真】北朝鮮、新型155ミリ自走砲を公開 「射程60キロ超」強調の狙い)
特に注目されるのが「60キロ超」という射程だ。従来の北朝鮮砲兵はソウル首都圏への大量砲撃能力が重視されてきたが、今回のシステムは西海5島周辺など限定地域での短時間高強度戦闘を意識している可能性がある。黄海南道沿岸からなら、延坪島のみならず韓国軍の後方支援拠点まで火力圏に収めることができるからだ。
北朝鮮は全面戦争になれば、米韓軍の圧倒的な航空優勢に直面する。F-35Aなどを保有する韓国空軍と在韓米軍の航空打撃能力を前に、固定化された砲兵戦力が長期間生き残るのは困難とみられている。このため北朝鮮が新型自走砲開発で目指しているのは、全面侵攻よりも、短時間で政治的・軍事的衝撃を与える「局地限定戦」の火力強化ではないかとの見方が出ている。
