北朝鮮でガソリンが「日本超え」の異常価格 金正恩を襲う“燃料ショック”

北朝鮮でガソリン価格が異常な高騰を見せている。米国の北朝鮮専門メディア NK News によれば、平壌市内のガソリン小売価格は1リットル換算で約1.56ドルに達し、一時は韓国の店頭価格を上回ったという。日本の平均的なガソリン価格をも超える水準であり、低所得国の北朝鮮で起きている現象としては極めて異例だ。

背景にあるのは、中東情勢の緊迫化に伴う原油高である。国際市場では供給不安から石油価格が急騰し、韓国でも4月の石油製品価格が前年同月比で大幅に上昇した。もっとも韓国には価格抑制策がある。だが、制裁下の北朝鮮にはそうした緩衝材がない。外貨不足の中で中国経由の輸入燃料、海上での瀬取り、非公式ルートに頼る脆弱な供給網が直撃を受けた格好だ。

しかも北朝鮮の燃料事情は、単なる「値上がり」で片付けられない。燃料はまず軍、治安機関、党中枢へ優先配分される。市場に流れるのはその残余にすぎず、価格高騰はすなわち民生部門の燃料枯渇を意味する。トラック輸送費は上昇し、地方への物資流通は滞り、農機の稼働も制約を受ける。コメ価格や生活必需品の物価をさらに押し上げる悪循環が始まりかねない。

実際、市場調査では北朝鮮のコメ1キロが約3万ウォン、ガソリン1キロは7万6000ウォン前後とされる。庶民感覚では、もはや燃料は生活インフラではなく「ぜいたく品」に近づいている。車を動かせるのは幹部層や外貨を持つ特権層に限られ、多くの市民にとっては高嶺の花だ。

(参考記事:金正恩氏の「高級ベンツ」を追い越した北朝鮮軍人の悲惨な末路

皮肉なのは、金正恩政権が軍事力強化を進めるほど、この矛盾が深まることである。軍の車両は動かし、艦艇には重油を回し、戦略兵器の燃料備蓄も維持しなければならない。そのしわ寄せは市場経済の末端に押しつけられる。国家の筋肉を肥大化させる一方で、経済の血管が詰まり始めている構図だ。

「日本より高いガソリン」は単なる価格逆転ではない。そこに浮かぶのは、核とミサイルを増やしながら、国内の物流と生活基盤が静かに干上がっていく北朝鮮の危うい実像である。