「統一」を憲法から消した北朝鮮 金正恩体制、「二つの国家」を法制化
北朝鮮が憲法を大幅に改正し、朝鮮半島全域を自国の領土とみなしていた従来の統一志向を明確に放棄したことが明らかになった。新たに北側地域のみを領土と規定する条項を設ける一方、「祖国統一」に関する条文を削除し、南北関係を「敵対する二つの国家」と位置づける金正恩政権の新路線を憲法に反映させた。建国以来掲げてきた「民族統一国家」の理念を自ら法文上で葬り去った形だ。
韓国統一省が6日、記者懇談会で明らかにした北朝鮮の新たな憲法前文によれば、従来の社会主義憲法に記されていた「北半部」「祖国統一」「社会主義の完全な勝利」といった文言が姿を消した。特に旧憲法第9条にあった「自主、平和統一、民族大団結の原則に基づき祖国統一を実現するため闘争する」との一節は全面削除された。これは北朝鮮が国家目標として掲げてきた統一政策の根幹を放棄したことを意味する。あわせて新設された第2条では、北朝鮮の領域を「北は中華人民共和国とロシア連邦、南は大韓民国と接する領土およびそれに基づく領海・領空」と規定した。韓国を明確に国境を接する別個の国家として定義したのであり、これは南北が一つの民族国家であるとの従来の建前を完全に覆すものと言える。
もっとも、金正恩氏がかねて言及していた韓国を「第一の敵対国」「不変の主敵」と明記する表現は盛り込まれなかった。軍事的緊張を高めつつも、法文上は一定の抑制を見せた格好だ。対外的には過度な挑発姿勢を避けながら、実質的には南北断絶を制度化する狙いが透ける。
今回の改憲でより注目されるのは、金正恩氏への権力集中がさらに進んだ点である。国家機関の配列順では国務委員長が最高人民会議より先に置かれ、「国家首班」と明記された。北朝鮮憲法で最高指導者が議会機関より前面に置かれたのは初めてであり、名実ともに絶対的元首として位置づけ直されたことになる。
さらに、核戦力に対する独占的な指揮権が初めて憲法に明記され、その権限を委任できる根拠条項まで新設された。最高人民会議が持っていた国務委員長の召還権も削除され、形式上残っていた牽制機能すら消滅した。最高人民会議議長や内閣総理の任免権も明文化され、軍・党・国家機構の全てが金氏個人の権限の下に一段と組み込まれた。
北朝鮮は近年、南北を「もはや同族ではなく交戦中の別国家」と位置づける論理を強めてきた。今回の改憲は、その政治的宣言を憲法という国家の最高規範へ刻み込んだものである。同時に、核兵器の威力を裏付けとする個人独裁体制の恒久化を法的に完成させたと言える。
