北朝鮮が2023年9月に進水させながら、その後はほとんど動きのなかった弾道ミサイル搭載潜水艦をめぐり、発射試験に踏み切る可能性が強まっている。韓国の衛星画像分析企業SIアナリティクス(SIA)が6日公表した報告書によると、同国東部の新浦周辺で整備を受けていた「金君玉英雄」潜水艦は、作業の大半を終え、近く潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などの試験に移行する可能性が高いという。

同艦は旧式ロメオ級潜水艦を大幅に改造したもので、船体上部に大型の発射区画を増設するなど、従来の潜水艦とは大きく異なる外観を持つ。このため専門家の間では「異形」とも評され、構造的な無理が指摘されてきた。特に、SLBM発射時に生じる強い圧力や衝撃に耐えられるかについては疑問が残り、「最悪の場合、1回の発射で艦体に致命的損傷が及ぶ可能性も否定できない」(米分析筋)との見方も出ている。

米研究機関38 Northなども、同艦を「実戦配備前の過渡的プラットフォーム」と位置づけ、発射能力そのものよりも政治的・示威的意味合いが強いと分析する。一方で、仮に1発でも発射に成功すれば、発射位置の特定が困難な海中発射能力を誇示することになり、抑止力の観点からは一定の効果を持つと指摘されている。

今回のSIAの分析は、技術的完成度よりも「発射を実行する段階に入ったか」に焦点を当てたものだ。衛星画像では支援船の減少や作業活動の縮小が確認され、運用準備が最終段階に入った可能性があるとされる。発射が行われれば、日本海側での短距離弾道ミサイルや巡航ミサイルの試験と組み合わせた複合的な軍事示威となる公算が大きい。

さらに注目されるのは、北朝鮮が並行して建造を進めているとされる戦略ミサイル原子力潜水艦の動向だ。

(参考記事:【写真】「ひっくり返るしかない」金正恩”戦略原潜”の異形の姿

公開された造船所の画像などからは、通常の原潜設計とは異なる不自然な船体構造や大型化した上部構造が確認されており、韓国の専門家からは水中で「ひっくり返るしかない」との指摘まで出ている。原子炉の小型化や静粛性確保といった技術的ハードルが高い中、外観先行で開発が進んでいる可能性があるとの見方もある。

北朝鮮は近年、核戦力の多様化を掲げ、地上発射だけでなく海中発射能力の確立を急いでいる。今回の動きは、たとえ技術的に未成熟であっても「撃てる」こと自体を優先し、抑止力を誇示しようとする姿勢の表れとも受け止められる。専門家の間では、「艦の安全性を犠牲にしてでも発射実績を積み上げる可能性がある」との見方が広がっており、今後の動向が注視される。