金正恩総書記が、先月23日の最高人民会議第15期第1回会議での施政演説で警察制度の導入を宣言して以降、北朝鮮住民の間で混乱と懸念が広がっていると、デイリーNKの現地消息筋が伝えている。

北朝鮮には現在、警察庁に相当する社会安全省があり、傘下の安全員たちが治安維持に当たっている。しかしその性格は公安機関に近く、日本などの警察組織とは役割や位置づけが異なる部分がある。

金正恩氏は演説で、「治安維持事業をより高い水準で進めるため、法的闘争分野を細分化・専門化した警察制度を整備することは当然かつ有益なことだ」と述べ、導入の意義を強調した。

しかし、国民の受け止めは違うようだ。

咸鏡北道の消息筋はデイリーNKに対し、「これまで革命歴史の教育で警察は階級の敵だと教えられてきたのに、今になって警察が悪い言葉ではないと言われると、あの教育は何だったのかささやき合う人が多い」と語った。

消息筋によれば、北朝鮮の歴史教育において警察は住民を弾圧・抑圧する存在とされ、これまで敵対し打倒すべき対象として扱われてきた。というのも、同国で警察という言葉は「日本帝国主義」の支配を想起させる象徴のひとつと言えるからだ。

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消息筋は「そうした話は12年制の義務教育過程で繰り返し扱われる核心的内容だ」とし、「それなのに警察が悪い言葉ではないと言われ、『地球が回っているのか太陽が回っているのか分からない』という反応が出ている」と述べた。

現在、北朝鮮は警察の概念を再定義し、新たな治安組織体系と制度の構築を進めようとしているとみられる。しかし住民の間では、こうした変化が現実には社会統制の強化につながる可能性があるとして、拒否感が広がっているという。

消息筋は「住民たちは今でも、自分たちを締め付ける安全員を嫌っている。警察に変わればむしろさらに悪辣になるのではないかと言っている」とし、「革命歴史教育によって警察に対する否定的認識が刷り込まれているためか、取り締まりが一層強まり生活がさらに厳しくなるのではないかという不安が大きい」と伝えた。