中東情勢の緊張が原油市場を直撃し、世界経済に「石油ショック」の懸念が広がる中、米国の対イラン軍事作戦を巡り、戦略上の重大な誤算があった可能性が指摘されている。ドイツの国防専門メディア 「ハルトプンクト(Hartpunkt)」 は、安価なドローンが高価な軍事装備や重要インフラに損害を与え得る構造を分析し、現代防空の弱点を改めて浮き彫りにした。
同メディアは9日、「なぜ安価なドローンが高価な装備を破壊できるのか」と題する記事を掲載。イランが運用する自爆型無人機「シャヘド136」などが、従来の防空システムに対し極めて厄介な脅威となっていると指摘した。米軍や湾岸諸国が配備するパトリオットやTHAADは、弾道ミサイルや航空機といった高高度の脅威を想定して設計されている。しかし、小型ドローンは低高度で地形に紛れて接近するため探知が遅れやすく、大量に投入される「飽和攻撃」の場合、完全な迎撃は困難とされる。
しかもコスト面では大きな非対称性がある。迎撃ミサイルは1発数百万ドルとされる一方、攻撃側のドローンは数万ドル程度とみられ、防御側が長期戦で不利に陥る可能性がある。
今回の中東危機では、石油施設や港湾、レーダー基地などがドローンの標的になり得るとの懸念が急速に広がり、原油市場が大きく動揺した。専門家の間では、湾岸地域のエネルギーインフラが継続的に脅かされれば、供給不安が拡大し世界的な石油価格の急騰につながるとの見方も出ている。
こうした構造的な弱点については、ロシアによるウクライナ侵略の戦場でもすでに顕在化していた。ロシアが同型のドローンを大量投入し、ウクライナの電力施設などを攻撃した事例は、低コスト兵器が高価なインフラを脅かす「新しい戦争の形」を示していたとされる。
それでも今回、米国のトランプ政権と米軍は、こうした知見を十分に戦略へ織り込めなかった可能性があるとの指摘が出ている。軍事専門家の間では、防空体制の再設計や低コスト迎撃手段の整備が必要との議論が進んでいたものの、政治的判断や作戦上の制約から、現場で活用する余地が限られていたとの見方もある。
ハルトプンクトは記事の中で、現代の防空は「高価な兵器で重要拠点を守る構造」であるのに対し、ドローン戦は「安価な兵器を大量投入する構造」であり、攻撃側がコスト面で優位に立ちやすいと指摘。そのうえで、低コスト迎撃兵器や近距離防空システムの整備が急務だと強調している。
中東で拡大するドローン戦の影響は、単なる軍事問題にとどまらない。世界のエネルギー供給を左右する湾岸地域の脆弱性が露呈したことで、今回の危機は「軍事的誤算が招いた経済的衝撃」として長く語られる可能性もある。
