国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は11日、中国当局に拘束されている脱北女性について、北朝鮮への強制送還を直ちに中止するよう中国政府に求めたと発表した。女性は韓国への渡航を試みた際に拘束され、北朝鮮に送還されれば拷問や強制労働など深刻な人権侵害に直面する恐れがあるとしている。

HRWが同日発表した声明によると、この女性は2019年、息子の脱北資金を工面するため中国人男性との事実上の強制結婚を余儀なくされた脱北者だという。息子は単身で韓国に入国し、ソウルの脱北青少年保護施設で生活してきた。一方、母親は息子の脱北を支援するため中国に残り、不法滞在の状態で生活していた。

その後、約1年を経て仲介者を通じて息子と連絡を再開したが、韓国行きを試みた際に中国当局に拘束された。現在は北朝鮮への強制送還が差し迫った状況とされる。

HRWは声明で「この女性が北朝鮮に送還されれば、拷問や強制労働、性暴力、強制失踪などに直面する恐れがある」と警告した。また、2014年に発表された国連北朝鮮人権調査委員会(COI)の報告を引用し、中国が脱北者の強制送還に協力する行為は「人道に対する罪の幇助に該当する可能性がある」と指摘した。

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さらにHRWは、中国が難民の地位に関する条約(1951年難民条約)と1967年議定書、ならびに拷問等禁止条約の締約国であることを挙げ、「迫害や拷問の実質的な危険がある国への強制送還を禁じる義務を負っているにもかかわらず、中国政府はこれを常習的に違反している」と批判した。

HRWによると、2024年1月から2025年9月までに北朝鮮へ強制送還された脱北者は少なくとも406人に上る。2020年以降の累計では少なくとも1076人に達したとしている。