「米国への憧れ強まった」北朝鮮の思想統制に深刻なほころび
証言によれば、多くの住民は「個人が努力して家を持つことができる」という点に注目した。北朝鮮では住宅は国家所有であり、配給された住居も処分や追放で失う可能性があるため、むしろ米国の制度への羨望が強まったという。
対米教育を通じて反米感情を高めようとした思想工作が、結果として米国への憧れを強める結果になっているのだ。(参考記事:「米軍が金正恩を爆撃してくれれば」北朝鮮庶民の毒舌が止まらない)
こうした状況は、現在の国際情勢を踏まえると北朝鮮指導部にとって看過し難い問題だ。米国は今年、反米姿勢を取る政権への圧力を強めており、ベネズエラに続いてイランに対しても軍事行動を行った。権威主義体制にとって、外部の圧力以上に危険なのは国内の心理的動揺だ。
北朝鮮は長年、反米思想を体制維持の柱としてきた。だが、情報流入や脱北者の証言を通じて、住民の間で外の世界への関心が広がり続けている。米国への「幻想」を消し去るはずの教育が逆に憧れを刺激しているとすれば、思想統制のほころびはすでに無視できない段階に達している可能性がある。
軍事力を誇示することはできても、住民の心を完全に統制することは容易ではない。外部世界の現実が伝わり始めた社会では、思想教育だけで体制の正統性を維持することは次第に難しくなる。北朝鮮当局にとって、今回の証言はその危うさを示す警告と言えそうだ。
