北朝鮮の金正恩総書記は、朝鮮労働党第9回大会閉幕直後の26日、新たに編成した指導部を率いて、金日成・金正日両氏の遺体が安置される錦繡山(クムスサン)太陽宮殿を参拝した。再編された権力中枢の結束を内外に誇示する狙いとみられる。一方で、後継者候補として注目される長女・金ジュエの姿はなく、権力継承を巡る思惑も交錯している。

朝鮮中央通信によると、参拝には政治局常務委員の朴泰成(パク・テソン)、趙甬元(チョ・ヨンウォン)、金才龍(キム・ジェリョン)、李日煥(リ・イルファン)の各氏らが同行。今回の党大会で党副部長から総務部長に昇進した金与正(キム・ヨジョン)氏も同席し、兄・金正恩氏の左後方という「影のセンター」とも言える位置に立った。これまで脇に控えていた金与正氏の“前進”は、党内序列の上昇と影響力拡大を象徴する場面として注目される。

(参考記事:金正恩に妹の与正が「命乞い」した権力中枢の”重大事件”

金与正氏は、宣伝扇動や対外メッセージの発信を事実上統括し、対韓・対米戦略における「影の司令塔」として存在感を強めてきた。今回の昇進により、名実ともに権力中枢の一角を占める形となり、北朝鮮政権は「女人天下」とも形容される新局面を迎えつつある。

女性幹部の台頭は金与正氏にとどまらない。外相に再登板した崔善姫(チェ・ソニ)氏は、対米交渉の最前線を担う実務責任者として重用されている。さらに、金正恩氏の儀典を取り仕切る玄月松(ヒョン・ウォルソン)氏もキーパーソンのひとりだ。党・外交・宣伝という権力の中枢を女性が押さえる構図は異例であり、金正恩体制の新たな特徴といえる。(参考記事:「妹じゃなきゃ処刑だ」金正恩と与正の微妙な権力均衡と”後継者ジュエ”登場の衝撃

一方、参拝に同行しなかった金ジュエ氏を巡っては、後継者候補としての地位が水面下で着実に固められているとの見方が根強い。近年、軍事行事や重要式典にたびたび同席し、事実上の「皇太女」として演出されてきたが、今回あえて姿を見せなかったことは、早期の後継色を薄めつつ、慎重に布石を打つ狙いがあるとの分析も出ている。

韓国統一部は今回の党大会を「金正恩時代の公式化」と評価。中央委員250人のうち約56%が入れ替わり、革命第一世代や元老級が一線を退く一方、実務型官僚と若手世代が前面に出たと指摘する。体制の若返りと同時に、金与正氏ら女性幹部の重用、さらには金ジュエ氏を軸とした長期的な権力継承構想が並行して進められている可能性が高い。