今年の春に軍入隊を控えた北朝鮮の高級中学校(高校)卒業学年の男子生徒の間で、自分が直接歌って録音した音楽ファイルを両親に手渡す新たな文化が広がっていることが分かった。ロシア派兵で戦死した兵士たちの事例を目の当たりにした学生たちが、「二度と帰って来られないかもしれない」という不安の中で、最後の贈り物を準備する動きだと分析されている。

25日、デイリーNKの平安南道消息筋は、「最近、平城市一帯の高級中学校卒業学年の男子生徒の間で、MP3などのオーディオ機器に自分たちが歌った歌を録音するブームが起きている」とし、「これは軍に入隊する前に、両親への特別な贈り物として渡すためのものだ」と伝えた。

実際、平城市のある高級中学校の卒業学年の男子生徒たちは集まって歌の練習を行い、ギター伴奏ができる友人の助けを借りながら、順番に自分のMP3プレーヤーへ歌を録音しているという。

こうした行動は、これまで見られなかった新しい文化であり、数年間に及ぶ長期の軍務体制に、ロシア派兵という要因が重なって形成されたものとみられる、と消息筋は話す。

消息筋は「ロシア派兵で戦死した兵士の家族に残ったものが、せいぜい写真くらいしかないことから、住民の間では『本当に胸が痛む』という声が広がっている。それを見た学生たちが、せめて自分の声だけでも残そうという思いで歌を録音し始めた」とし、「自分たちも派兵されるかもしれないという意識の下での、準備の一環でもある」と語った。

同様の動きは、両江道恵山市でも確認されている。

両江道の消息筋は、「最近、高級中学校卒業学年の男子生徒たちが、音楽を保存できる機器を求めて、集団で市場(チャンマダン)を歩き回る姿が頻繁に目撃されている」とし、「主に価格が高すぎず、録音・保存・再生が可能なMP3のような機器を探している」と伝えた。

さらに、「彼らが機器を購入する目的は、軍に入る前に自分たちが歌った数十曲を収め、両親に贈るためだ」とし、「生活が苦しい家庭では、親戚の助けを借りてでも機器を用意している」と述べた。

自分で歌って録音した曲を両親に贈ることが、一つの流行であり、入隊前の“必須の通過儀礼”のように受け止められるようになり、何としても機器を手に入れようとする動きが広がっているという。

この消息筋は、「今年は軍務を控えた雰囲気が、これまでとは完全に違う。以前は『長い間離れ離れになる』という程度の認識だったが、今年は『永遠に帰ってこられないかもしれない』という恐怖と不安が広がっている」と語った。

このため、親たちも、子どもが夜遅くまで友人と集まって歌い、騒いでいても、特に叱らないという。

(参考記事:「恐怖に震え自信喪失」北朝鮮のロシア派兵部隊、深刻な実態

消息筋は、「子どもが軍隊に行って、いつ何が起きるかわからないという思いから、親はただ思う存分楽しませてやろうという気持ちだ」とし、「子どもが自分たちのために歌を準備し、練習していると知って、誇らしく思う一方で、申し訳なさを感じてもいる」と話した。

さらに、「国家は戦死者を英雄として称え、家族に平壌居住権を与えるなどの優遇措置を取っているが、喪失の痛みを埋めることはできない」とし、「入隊を控え、親に残す歌を準備する子どもたちと、そんな姿を黙って見守る親たちの様子を見るだけでも、彼らが現実をどう受け止めているかが分かる」と付け加えた。

なお、学生たちが録音している曲は、主に両親が普段よく歌う愛唱歌や、「母の幸せ」「母の愛」「母を思う」といった、母親をテーマにした叙情的な歌だと伝えられている。